判旨
控訴裁判所は、訴訟記録および第1審で取り調べた証拠により、直ちに判決することができると認める場合には、新たな証拠調べを行うことなく原判決を破棄自判することができる。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が事実誤認等を理由に原判決を破棄する場合、新たな証拠調べを行うことなく、訴訟記録および第1審の証拠のみに基づいて自判することが許されるか。刑事訴訟法第400条ただし書(当時)の解釈が問題となる。
規範
刑事訴訟法上の控訴審において、訴訟記録および第1審で既に取り調べられた証拠のみに基づいて、事実誤認等の理由で原判決を破棄し、自ら判決(自判)を言い渡すことは、当該記録等により直ちに判決可能と認められる限りにおいて適法である。
重要事実
被告人が第1審判決に対し控訴した事案において、控訴裁判所が新たな証拠調べを行うことなく、第1審の訴訟記録および証拠の再評価のみに基づいて原判決を破棄し、自判を行った。これに対し、弁護人が証拠調べを欠いた自判は違憲・違法であるとして上告した。
あてはめ
控訴裁判所は、第1審から送付された訴訟記録および第1審で適法に取り調べられた証拠を精査し、それらから得られる心証によって事実の存否を判断することができる。本件において、控訴裁判所がこれらの資料に基づき、直ちに判決をなすに足りると判断したことは、裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、手続上の違法は認められない。証拠の総合的な評価に基づく事実認定に不合理な点はなく、憲法違反や証拠法則違反の主張もあたらない。
結論
控訴裁判所による破棄自判は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
控訴審が事後審的性格を有することを確認する判例であり、1審の証拠に基づき1審判決を覆す「書面審理による逆転有罪(または無罪)」の可否を論じる際の根拠となる。もっとも、直接主義・口頭主義の観点から、供述証拠の信用性を否定して逆転判決をする場合には、現在では原則として供述者の直接尋問が必要とされる点(最決昭57.5.27等)に留意が必要である。
事件番号: 昭和29(あ)3043 / 裁判年月日: 昭和30年7月5日 / 結論: 棄却
原審は刑訴法に従つて公開の公判廷において弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聞いた上判決しているのであつて、公開の公判を開かないわけではなく、また原判決は執行猶予の期間を変更したのみで、犯罪事実の認定、刑の量定そのものは第一審判決と同様に判示しているのであるから、原審が刑訴法第四〇〇条但書によつて破棄自判したことが憲法第三七…