原審は刑訴法に従つて公開の公判廷において弁護人の控訴趣意の陳述、弁論を聞いた上判決しているのであつて、公開の公判を開かないわけではなく、また原判決は執行猶予の期間を変更したのみで、犯罪事実の認定、刑の量定そのものは第一審判決と同様に判示しているのであるから、原審が刑訴法第四〇〇条但書によつて破棄自判したことが憲法第三七条に違反するとの所論は本件に副わないものとして採用することができない。
控訴審と公開裁判
憲法37条,刑訴法43条,刑訴法389条,刑訴法400条但書
判旨
控訴裁判所は、訴訟記録及び第一審の証拠のみによって直ちに判決できると認める場合には、必ずしも新たな証拠を取り調べることなく破棄自判することが可能である。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が第一審判決を破棄して自ら判決を下す(破棄自判)にあたり、新たな証拠調べを行うことなく、訴訟記録と第一審の証拠のみに基づいて判断することが許されるか。また、それが公開裁判等の憲法上の要請に反しないか。
規範
控訴裁判所が刑事訴訟法に基づき第一審判決を破棄して自ら判決(破棄自判)を行う際、訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみによって直ちに判決することができると認められる場合には、改めて新たな証拠を取り調べることを要しない。
重要事実
被告人は選挙運動の報酬および資金等の供与に関わる罪に問われた。第一審判決に対し、弁護人は事実誤認や量刑不当を理由に控訴したが、控訴審(原審)は第一審の訴訟記録を審査し、公開の公判廷で弁論を経た上で、執行猶予期間等を変更する破棄自判を行った。被告人側は、新たな証拠調べを行わずに有罪判決を維持・変更したことは憲法37条(公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利)や憲法39条(二重処罰の禁止等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は刑事訴訟法に従い、公開の公判廷にて弁護人の控訴趣意の陳述および弁論を聴取している。原判決は執行猶予の期間等を変更したのみであり、犯罪事実の認定や刑の量定そのものは第一審と同様の判断を維持している。このように、記録と旧証拠に基づき判断が可能であると認められる状況下では、改めて証拠調べを実施しなくても手続上の違法はない。また、公開の法廷で弁論等の手続を経ている以上、憲法が保障する公開裁判の原則等にも反しないといえる。
結論
控訴裁判所が新たな証拠調べをせずに第一審の記録のみで破棄自判することは適法であり、憲法にも違反しない。上告棄却。
実務上の射程
控訴審の事後審的性格を確認する判例である。答案上では、控訴審における事実認定のあり方や破棄自判の許容範囲が問題となる局面で、第一審の記録により十分な判断が可能であれば、改めての証拠調べは必須ではないとする根拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)3943 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所は、訴訟記録および第1審で取り調べた証拠により、直ちに判決することができると認める場合には、新たな証拠調べを行うことなく原判決を破棄自判することができる。 第1 事案の概要:被告人が第1審判決に対し控訴した事案において、控訴裁判所が新たな証拠調べを行うことなく、第1審の訴訟記録および証拠…