判旨
自白を補強すべき証拠は、自白にかかる犯罪事実の全部を網羅する必要はなく、自白の真実性を保障するに足りるものであれば足りる。また、控訴裁判所が破棄自判を行う際、必ずしも控訴審で新たな証拠を取り調べる必要はない。
問題の所在(論点)
1. 自白に対する補強証拠はどの程度の範囲で必要か(補強証拠の範囲)。 2. 控訴裁判所が証拠調べをせず、記録のみに基づき第一審判決を破棄して自ら判決(破棄自判)することは許されるか。
規範
1. 憲法38条3項、刑訴法319条2項にいう補強証拠は、自白にかかる犯罪事実の全部にわたって存在することを要せず、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。 2. 刑訴法400条但書の規定は、控訴裁判所が訴訟記録及び第一審で取り調べた証拠のみに基づいて直ちに判決できる場合に、控訴審独自の証拠調べを経ることなく破棄自判することを許容する。
重要事実
公職選挙法違反の被告人に対し、第一審は禁錮1年・執行猶予1年の判決を下したが、控訴審は新たな証拠調べを行うことなく、第一審の記録と証拠のみに基づいて第一審判決を破棄し、被告人を禁錮1年の実刑に処した。被告人側は、補強証拠の不足、及び控訴審での証拠調べ欠如による自判の違憲・違法を主張して上告した。
あてはめ
1. 補強証拠について:第一審判決が掲げた被告人の供述調書以外の各証拠(Bの供述等)は、被告人の自白にかかる事実の真実性を保障するに足りると認められるため、補強証拠として十分である。 2. 破棄自判について:刑訴法400条但書は、訴訟記録等の内容から直ちに判決が可能と認められる場合には、改めて証拠調べを要さず自判できる趣旨である。本件控訴審が第一審の証拠等に基づき判断したことに違法はない。
結論
被告人の上告を一部容認(量刑不当による破棄自判)。補強証拠の範囲や控訴審の自判手続に関する憲法・判例違反の主張は、いずれも採用できない。
実務上の射程
補強証拠の程度に関する「真実性保障説」を確立した判例として、実務・答案上極めて重要である。答案では、客観的状況(罪体の存在)を裏付ける証拠があるかを検討する際の規範として活用する。また、控訴審の事後審的性格を示す根拠としても参照される。
事件番号: 昭和29(あ)2404 / 裁判年月日: 昭和30年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】証拠調べに手続的な違法があったとしても、当該証拠を除外した残りの適法な証拠によって犯罪事実の認定が可能であるならば、その違法は判決に影響を及ぼすべきものとはいえず、判決の破棄理由にはならない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反等に問われた事件において、原審(控訴審)は事実認定を行ったが、そ…