立候補届出前の買収事犯に公職選挙法二二一条三項を適用した違法と刑訴法四一一条
判旨
被告人の自白に対し、受供与者らの検察官に対する各供述調書は補強証拠として十分であり、憲法38条3項に違反しない。また、判決に法令適用の違法があっても、処断刑の範囲内であり正義に反するといえない場合は、破棄理由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 被告人の自白に対し、受供与者らの供述調書は補強証拠として十分か(自白の補強証拠の要否)。 2. 法令適用の誤りがある場合でも、判決を維持しうるか(破棄自判の要件)。
規範
1. 憲法38条3項の自白の補強証拠については、自白の真実性を担保するに足りる証拠があれば足りる。 2. 判決に法令適用の違法がある場合であっても、刑の量定が正当な処断刑の範囲内にあり、事案の内容等に照らして原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められないときは、上告棄却の対象となる(刑訴法411条等の趣旨)。
重要事実
被告人は公職選挙法違反の罪に問われ、公判廷および捜査段階で自白した。これに対し、第一審および原審は、受供与者らが検察官に対して作成した各供述調書を証拠として採用した。また、原判決は立候補届出前の行為に対し、同法221条1項1号に加え、本来適用できないはずの同条3項を誤って適用していた。
あてはめ
1. 証拠関係において、被告人の自白のほかに受供与者らの各供述調書が存在することは判文上明らかであり、これらは自白の真実性を裏付ける補強証拠として「十分なもの」と評価できる。 2. 届出前の行為に公選法221条3項を適用した点は違法であるが、宣告された「懲役8月、執行猶予4年」という刑は正当な処断刑の範囲内である。事案の内容を考慮すれば、この違法は判決を破棄しなければ著しく正義に反する事態には当たらないといえる。
結論
本件上告を棄却する。自白の補強証拠は十分であり、また法令適用の違法も判決を破棄すべき事由には該当しない。
実務上の射程
自白の補強証拠の範囲(共犯者の供述や関係者の供述の評価)および、量刑に影響しない微細な法令適用ミスが上告審でどのように扱われるかを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和44(あ)1073 / 裁判年月日: 昭和44年9月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外の証拠を総合することで、知情の事実を含めた犯罪事実を認定できる場合、憲法38条3項の補強証拠の要請を満たし、適法に有罪判決を下すことができる。 第1 事案の概要:被告人が犯行に関与した事案において、被告人の供述(自白)が得られていた。弁護人は、当該供述について任意性に疑いがあること…