判旨
公職選挙法221条1項4号の買収罪において、判決書に「選挙人にして」と記載されている場合、それが特定の選挙区の選挙人である趣旨であることが証拠等から明白であれば、罪刑法定主義や構成要件の認定として欠けるところはない。
問題の所在(論点)
判決書において、公職選挙法221条1項4号の主体要素である「選挙人」との判示が、具体的な選挙区を明示しないままなされた場合に、同条の構成要件の判示として十分といえるか。
規範
公職選挙法221条1項4号(利害誘導罪)の成立には、行為者が「選挙人又は選挙運動者」であることが必要である。判決における事実認定において、これらの身分が証拠に基づき合理的に特定されているならば、表現の簡略化があっても構成要件の判示として不足はない。
重要事実
被告人は、長野県第2区における選挙に関して買収行為を行ったとして、公職選挙法違反で起訴された。第一審判決は、被告人の身分について「選挙人にして」と判示したが、具体的にどの選挙区の選挙人であるかという文言は直接的に記述されていなかった。弁護人は、この判示が不十分であり、構成要件の認定に欠陥があるとして上告した。
あてはめ
第一審判決の「選挙人にして」との表現は、判示の全体的な文脈および挙示された証拠に照らせば、被告人が「長野県第2区の選挙人」であることを指していることが明白である。また、第一審判決は被告人が「選挙運動者」であることも併せて判示している。したがって、公職選挙法221条1項4号が定める主体の属性を認定した判示として、必要かつ十分な事実が摘示されているといえる。
結論
被告人が特定の選挙区の選挙人かつ選挙運動者であることは証拠上明白であり、構成要件の判示に欠けるところはないため、上告を棄却する。
実務上の射程
公職選挙法違反の事案において、判決書の事実適示が簡略であっても、証拠や他の判示部分から構成要件該当性が一義的に特定できる場合には、理由不備や法の適用誤りにはならない。答案上は、身分犯の認定において、形式的な文言のみならず実質的な証拠との対応関係が重要であることを示す際に参照し得る。
事件番号: 昭和28(あ)2939 / 裁判年月日: 昭和28年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法221条1項4号の買収罪は、犯人が必ずしも当該選挙区の選挙人であることを要しないが、当該選挙区の選挙人である場合は当然に同号の主体に含まれる。 第1 事案の概要:被告人は、衆議院議員選挙に長野県a区から立候補した候補者Aの選挙運動者であった。第一審判決は、被告人が本件選挙の選挙人であると…