被告人は甲被疑事実について、昭和二七年一〇月二八日逮捕状によつて逮捕され、同月三一日勾留状によつて勾留の執行を受けたが、同年一一月九日に至り勾留期間が同月一九日まで適法に延長されたものであつて、被告人は同年一一月一九日一旦釈放されたが、右逮捕状に記載されている被疑事実とは全く別個の乙被疑事実について再び逮捕勾留されたものであるから、所論の如く同一の事件について引き続き勾禁されたものでなく刑訴第二〇八条に違反しない。
別件による勾留を通じて前後三〇日間勾留をうけた場合と刑訴第二〇八条
刑訴法208条
判旨
刑事訴訟法335条2項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由」等とは、犯罪構成要件そのものの存否に関する主張を含まない。そのため、受領金員が報酬ではなく政治献金であるとの主張は、同項の判断対象とはならず、罪となるべき事実の認定において判断すれば足りる。
問題の所在(論点)
被告人が主張する「金員が政治献金である」という事由が、刑事訴訟法335条2項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由」に該当し、判決において明示的な判断を要するか。
規範
刑事訴訟法335条2項にいう「法律上犯罪の成立を妨げる理由」又は「刑の加重減免の事由」とは、正当行為(刑法35条)のように法律上当然に犯罪の成立を阻却する場合、あるいは併合罪(刑法45条)や心神耗弱(同39条2項)のように法律上当然に刑を加重減免すべき事由を指す。犯罪構成要件に該当する事実そのものの存否に関する主張はこれに含まれず、同法335条1項の「罪となるべき事実」の認定において判断されるべきものである。
重要事実
被告人は公職選挙法違反の罪で起訴されたが、授受された158万円について、検察側は「選挙運動の報酬及び投票買収資金」であると主張したのに対し、被告人は「政治献金」であると主張して、犯罪構成要件の該当性を争った。第一審判決は、この被告人の主張を排斥して有罪としたが、弁護人は、政治献金であるとの主張について刑訴法335条2項の判断が示されていないとして、理由不備を理由に上告した。
あてはめ
本件における158万円の性質に関する主張は、それが報酬等(犯罪構成要件)にあたるか否かという、構成要件の存否そのものを争うものである。このような事由は、正当行為や心神耗弱といった、構成要件該当性を前提とした上での違法性・責任阻却事由や刑の減免事由とは性質が異なる。第一審において、当該金員が「選挙運動の報酬及び投票買収資金その他同運動費用として供与されたもの」と認定された時点で、その反面として政治献金であるとの主張を排斥したことは明らかである。したがって、335条1項の事実認定の中に判断が含まれているといえ、別途2項としての判断を示す必要はない。
結論
本件金員の性質に関する主張は刑訴法335条2項の事由に該当しないため、原判決に理由不備の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
答案作成上、アリバイ主張や構成要件該当性の否認といった「罪となるべき事実」と両立しない主張については、335条2項の判断を要しない根拠として本判例を引用できる。あくまで違法性阻却事由や責任阻却事由、刑の減免事由(必要的減免)のみが同項の対象となることを明確にする際に有用である。
事件番号: 昭和30(あ)1747 / 裁判年月日: 昭和30年10月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法335条1項が定める有罪判決における「証拠の標目」の示し方について、判示事項を具体的に摘示せず、証拠の種類等を列挙する形式であっても、同条の趣旨に反しない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反(寄附の禁止等)に問われた事案において、第一審裁判所は有罪を言い渡す際、判決文に「証拠の標…