一 刑訴第三二一条第一項第二号の書面の謄本を証拠とすることにつき、弁護人がその内容に特信性がない旨を述べたに止まり、証拠調が原本によつてなされないこと、原本に供述者の署名押印が存することおよび謄本が原本に基いて真正に作成されたことに異議のあつた形跡がなく且つ特信性の存在も肯定される以上右謄本を証拠としても違法ではない。 二 刑訴第三三五条第二項にいう刑の加重減免の理由となる事実とは、犯罪の構成要件に該当する事実以外の事実であつて、法律上当然刑が加重減免される理由となる事実として規定されたものをいい、公職選挙法第二五二条第三項にかかげる裁量的事実のごときはこれに該当しないものと解するのが相当である。
一 刑訴法第三二一条第一項第二号の書面の謄本に証拠能力があるとされた事例 二 刑訴法第三三五条第二項にいう刑の加重減免の理由となる事実とは何か
刑訴法321条1項2号,刑訴法335条2項,公職選挙法252条3項
判旨
刑事訴訟法335条2項にいう「刑の加重減免の理由となる事実」とは、法律上当然に刑が加重減免される事実を指し、裁判所の裁量による加重減免の事由は含まれない。
問題の所在(論点)
裁判所が判決において判断を示す義務を負う「刑の加重減免の理由となる事実」(刑事訴訟法335条2項)に、公職選挙法252条3項に規定されるような「裁判所の裁量によって加重減免される事実」が含まれるか。
規範
刑事訴訟法335条2項の「刑の加重減免の理由となる事実」とは、犯罪の構成要件に該当する事実以外の事実であって、法律上当然に刑が加重減免される理由となる事実として規定されたものを指す。
重要事実
被告人が公職選挙法違反に問われた事案において、第一審判決に対し、弁護側が公職選挙法252条3項に基づく裁量的な選挙権・被選挙権の不停止(執行猶予付判決の場合の特例)が認められるべきであると主張したが、原判決がこれについて明示的に判断を示さなかったため、判例違反および理由不備を理由として上告した。
あてはめ
公職選挙法252条3項は、情状により選挙権・被選挙権を停止させないことができるとする裁判所の裁量的事実を定めたものである。これは法律上当然に刑を減免するものではなく、職権による裁量判断の対象に過ぎない。したがって、構成要件に該当する事実以外で法律上当然に刑を左右する事実(必要的減免事由等)には該当せず、判決で必ず判示しなければならない事由にはあたらない。
結論
公職選挙法252条3項の裁量的事実は刑の加重減免の理由となる事実に該当しないため、これについて判示しなかった原判決に違法はない。
実務上の射程
刑事裁判の実務上、刑法上の再犯(必要的加重)や中止犯(必要的減免)などは本条の判示対象となるが、刑法66条の酌量減軽や本件のような公選法上の裁量による停止免除は判示義務の対象外となる。答案上、判決の理由不備(378条4号)や335条2項違反を論じる際の限定解釈として活用する。
事件番号: 昭和28(あ)4614 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 棄却
被告人は甲被疑事実について、昭和二七年一〇月二八日逮捕状によつて逮捕され、同月三一日勾留状によつて勾留の執行を受けたが、同年一一月九日に至り勾留期間が同月一九日まで適法に延長されたものであつて、被告人は同年一一月一九日一旦釈放されたが、右逮捕状に記載されている被疑事実とは全く別個の乙被疑事実について再び逮捕勾留されたも…