原判決が、公民権停止の裁判をしていないときには、選挙権及び被選挙権に対する制限は、公職選挙法二五二条第一項所定の裁判の確定という事実に伴い法律上当然に発生するものであり裁判により形成される効果ではないから、同条項の憲法違反の主張は、原判決の違法を主張するものでなく上告理由として不適法である。
原判決の適用していない法令の憲法違反を主張する上告の適否
公職選挙法221条1項,公職選挙法252条1項,憲法15条
判旨
公職選挙法252条1項に基づく公民権の停止は、有罪判決の確定という事実に伴い法律上当然に発生する効果であり、裁判の内容として形成されるものではない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、公職選挙法252条1項に基づく公民権の停止が「裁判の内容」に含まれるか、それとも判決確定に伴う「法律上の効果」にすぎないか。
規範
公職選挙法252条1項に規定される選挙権および被選挙権の制限(公民権停止)は、裁判の確定という事実に伴って法律上当然に発生する付随的効果であり、裁判そのものの内容として形成される司法処分ではない。
重要事実
被告人が公職選挙法違反等の罪に問われ、有罪判決を受けた。これに対し、被告人側は判決による公民権停止が憲法に違反する旨を主張して上告したが、原判決自体は公民権停止を宣告する判決を下していなかった。
あてはめ
本件において、原判決は公民権停止を主文等で宣告していない。公職選挙法252条1項による制限は、特定の罪について刑が確定したという客観的事実に基づき、法律の規定により自動的に発生する。したがって、この効果は裁判官の裁量による形成的判断ではなく、裁判の違法性を争う上告理由として「原判決そのものの違法」を主張することはできない。
結論
公民権の停止は判決確定に伴う法律上の当然の効果であり、裁判の内容ではないため、これに対する違憲主張は上告理由として不適法である。
実務上の射程
公職選挙法違反事件等の実務において、公民権停止の不利益を理由に判決自体の違憲・違法を争うことの限界を示す。憲法上の権利制限として争う場合は、判決の適否ではなく、法律自体の合憲性や、停止を回避するための執行猶予・刑の減軽の可否といった枠組みで論じる必要がある。
事件番号: 昭和33(あ)2451 / 裁判年月日: 昭和34年3月19日 / 結論: 棄却
所論は、違憲をいうが、原一、二審判決は、公民権停止の判決をしていないのである。元来選挙権および被選挙権に対する所論の制限は公職選挙法二五二条一項所定の裁判の確定という事実に伴い法律上当然発生するものであつて、裁判により形成される効果ではないのであるから、所論は原判決に対する攻撃とは認められず、従つて上告理由として不適法…