判旨
公職選挙法違反の罪により刑に処せられたことに伴う選挙権及び被選挙権の制限は、法律上当然に発生する効果であり、裁判所が判決において公職選挙法252条を適用・宣言せずとも当然にその制約が及ぶ。また、同条3項の不適用は裁判所の裁量の範囲内であり、何ら法令違反を構成しない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において公職選挙法252条による選挙権・被選挙権の制限を宣告しなかった場合、または同条3項を適用しなかった場合に、判決に法令違反が生じるか。同条による制限の法的性質が問題となる。
規範
公職選挙法252条に基づく選挙権・被選挙権の制限(欠格事由)は、同法に定める有罪判決の確定によって法律上当然に発生するものであり、刑事判決の主文または理由において明示することを要しない。また、同条3項による情状による制限の免除(適用除外)を行うか否かは、事実審裁判所の裁量に委ねられる。
重要事実
被告人は公職選挙法違反の罪に問われ、有罪判決を受けた。弁護人は、刑事判決において公職選挙法252条を適用して選挙権等の制限を課すことが憲法に違反する旨を主張し、上告した。しかし、原審判決は同条を直接適用する旨の判示を行っておらず、また同条3項の適用(免除)も行わなかった。
あてはめ
本件において、公職選挙法252条による選挙権等の制限は、有罪判決という法的事実に基づき「法律上当然発生するもの」である。したがって、判決においてこれに言及していないことは、単に当然の帰結を記載していないに過ぎず、判決の瑕疵とはなり得ない。また、被告人側に有利な情状を考慮して制限を免除できる同条3項の規定についても、その適用は「裁判所の裁量に委ねられている」。原審が同条3項を適用しなかったとしても、それは裁量の範囲内であり、不当な不適用として法令違反を構成することはない。
結論
公職選挙法違反に伴う被選挙権等の制限は法律上当然の帰結であり、判決での不記載や、裁量による免除規定(252条3項)の不適用は、上告理由となる法令違反には当たらない。
実務上の射程
刑事実務において、公職選挙法違反被告事件の判決書に欠格期間等の記載がない場合であっても、受刑者は当然に公民権を停止されること。および、弁護側が公民権停止の回避(同法252条3項の適用)を求めた場合でも、裁判所には広範な裁量があることを示す。
事件番号: 昭和29(あ)1877 / 裁判年月日: 昭和30年2月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法違反の罪により刑に処せられた者に生じる選挙権・被選挙権の停止は、同法252条1項という法律の規定に基づき当然に発生する効果であり、判決の効力として発生するものではない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法違反の罪に問われた事案において、弁護人は同法252条1項(選挙権等の停止規定)が違…