判旨
上告趣意書提出最終日の指定通知をすべき「弁護人」とは、指定の時点で既に選任されている弁護人を指し、指定後に選任された弁護人に対する通知は不要である。
問題の所在(論点)
上告趣意書提出の最終日が指定された後に選任された弁護人に対しても、裁判所は改めて期間指定の通知をしなければならないか。通知を欠いた場合、指定期間経過後の趣意書提出は有効か。
規範
上告趣意書提出最終日の指定(刑訴法376条、刑訴規則252条、266条、236条)に際し、通知の対象となる弁護人とは、当該指定がなされる時点で既に選任され記録上明らかな弁護人を指す。したがって、最終日の指定通知後に選任届が提出された弁護人に対し、改めて期間指定の通知を行う必要はない。
重要事実
被告人らは昭和30年5月21日に上告を申し立てた。最高裁判所は同年6月20日付で、上告趣意書の提出最終日を同年8月1日と指定し、各被告人に通知した。各被告人は同月21日又は22日にこれを受領した。その後、被告人らは同月27日付で弁護人を選任し届出を行った。弁護人は同年8月19日に上告趣意書を提出したが、これは指定された最終日(8月1日)を経過していた。
あてはめ
本件において、最高裁判所が最終日を指定し被告人に通知した昭和30年6月20日の時点では、弁護人はまだ選任されていなかった。弁護人が選任されたのはその後の同月27日であり、裁判所が通知義務を負う「すでに選任されている弁護人」には当たらない。したがって、被告人に対する通知によって提出期間は有効に進行しており、指定日を経過してなされた弁護人による趣意書の提出は、適法な期間内になされたものとは認められない。
結論
上告趣意書は所定の提出期間経過後に提出されたものと認められ、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和26(あ)380 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。
刑事訴訟手続における期間指定の通知対象を限定し、手続の迅速・確定を図る判例である。答案上は、弁護人の選任時期と指定通知の時期を対比し、通知の欠缺(手続違背)の有無を判断する際の基準として活用する。
事件番号: 昭和29(あ)3456 / 裁判年月日: 昭和30年4月8日 / 結論: 棄却
刑訴第三九条第三項による検察官の接見の指定が起訴の日と同日であつたとしても、この事だけをもつて直ちに被告人の防禦の準備をする権利を不当に制限したものと断ずることはできない。
事件番号: 昭和26(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
被告人の上告した事件につき、上告趣意書が法定の期間内に原審弁護人から差出されても、その上告審における弁護人選任届の提出が右期間経過後であれば、有効なものとはならない。