被告人の上告した事件につき、上告趣意書が法定の期間内に原審弁護人から差出されても、その上告審における弁護人選任届の提出が右期間経過後であれば、有効なものとはならない。
上告趣意書提出期間経過後の弁護人の選任届の提出と弁護人の上告趣意書の効力
刑訴法414条,刑訴法376条,刑訴規則252条,刑訴規則18条
判旨
上告趣意書の差出期間内に選任届が提出されていない弁護人による書面の提出は無効であり、期間内に有効な上告趣意書が提出されなかったものとして上告棄却を免れない。
問題の所在(論点)
上告趣意書差出期間内に書面が提出されたものの、提出時において弁護人選任届が未提出であり、期間経過後に選任届が提出された場合に、当該書面の提出は有効な上告趣意書の差出しとして認められるか。
規範
刑事訴訟法に基づく上告審の審理において、上告趣意書は有効に選任された弁護人又は被告人本人によって提出される必要がある。選任の効力は選任届の提出によって生じるため、上告趣意書の差出期間内に弁護人選任届が提出されていない場合、その者が提出した書面は有効な上告趣意書とは認められない(刑訴法386条1項1号、414条参照)。
重要事実
被告人両名の上告審において、原審弁護人が上告趣意書差出期間内である昭和26年5月24日に上告趣意書を提出した。しかし、被告人らによる当該弁護人の選任届が最高裁判所に提出されたのは、差出期間の最終日である同月26日を経過した後の同月29日であった。
事件番号: 昭和26(あ)380 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。
あてはめ
本件において、書面の提出自体は差出期間内に行われているが、その時点では弁護人としての資格を証明する選任届が提出されていない。選任届の提出は期間経過後の5月29日であり、期間内(5月26日まで)に有効な選任関係に基づく書面の提出があったとはいえない。したがって、適法な選任を受けていない者による書面提出は無効であり、期間内に有効な上告趣意書が差し出されなかったものと評価される。
結論
上告趣意書差出期間内に有効な上告趣意書が差し出されなかったものとして、刑訴法386条1項1号、414条により上告は棄却される。
実務上の射程
弁護人の訴訟行為の有効性は選任届の提出を基準に厳格に判断される。実務上、上告趣意書の提出期限が迫っている場合でも、必ず期限内に弁護人選任届を併せて(あるいは先行して)提出しなければ、上告棄却の決定を受けるリスクがあることを示す。追完による治癒は認められないという趣旨である。
事件番号: 昭和26(あ)535 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書提出期間経過後に提出された上告趣意追加申立については、裁判所はこれに対して判断をする必要はない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告趣意書を提出したが、その後、上告趣意書提出期間が経過してから上告趣意追加申立書を裁判所に提出した事案である。 第2 問題の所在(論点):上告趣意書提出期…
事件番号: 昭和26(れ)1250 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法廷期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。
事件番号: 昭和26(あ)134 / 裁判年月日: 昭和26年9月4日 / 結論: 棄却
弁護人安井源吾提出の上告趣意書(論旨は刑訴四〇五条に該らす、上告適法の理由でない)は、同弁護人の選任に被告人の連署を欠きその選任を有効と認め難いから、受理することを得ない。結局本件上告につき指定期間内に趣意書の提出がないものというべきである。