上告趣意書を差出すべき法定期間を經過した後に差出された辯護人選任届によつては、その以前に差出された辯護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)一二九號同年六月一二日第二小法定判決)
上告趣意書提出期間經過後、辯護人選任届を差出した場合の上告趣意書の効力
刑訴法423條,刑訴法41條
判旨
上告趣意書の提出期間経過後に弁護人選任届が提出された場合、期間内に提出されていた弁護人名義の上告趣意書を追完して有効とすることはできない。
問題の所在(論点)
上告趣意書の提出期間内に提出された弁護人名義の書面について、期間経過後に提出された弁護人選任届によって、その提出行為を有効なものとして追完することができるか(刑事訴訟法旧427条、現414条・376条等の趣旨)。
規範
上告趣意書を提出すべき法定期間内に有効な弁護人選任がなされていない場合、当該期間内に弁護人名義で書面が提出されていたとしても、期間経過後の選任届出によってその瑕疵を追完し、当該書面の提出を有効なものと扱うことは認められない。
重要事実
被告人が上告を提起した事案において、上告趣意書提出期間の最終日の前日(昭和23年6月6日)に、原審弁護人であったA名義で「上告趣意書」と題する書面が最高裁判所に提出された。しかし、被告人がAを当審(上告審)の弁護人に選任する旨の選任届は、提出期間経過後である同月17日になって初めて提出された。
あてはめ
本件では、書面提出時点(6月6日)においてAは当審の弁護人として適法に選任されていなかった。その後、期間を経過した6月17日に選任届が提出されているが、判例の趣旨に照らせば、この後発的な選任届によって過去の無権限者による書面提出行為を有効化(追完)することはできない。したがって、法的期間内に有効な上告趣意書が提出されなかったものと評価せざるを得ない。
結論
法定期間内に適法な上告趣意書が差し出されなかったものとして、刑事訴訟法427条(旧法)に基づき、上告を棄却する。
実務上の射程
弁護人の訴訟行為の有効性は、原則として行為時における選任の有無によって決せられるという厳格な手続観を示すものである。実務上、上告趣意書の提出においては、提出期限までに必ず当審の弁護人選任届が裁判所に到達していることを確認する必要がある。
事件番号: 昭和24(れ)1662 / 裁判年月日: 昭和25年11月29日 / 結論: 棄却
所論再上告の申立は、昭和二四年四月二八日福岡高等裁判所の為した上告棄却の決定に対するものであり、従つて、判決に対するものでない点で不適法たるを免れない。しかのみならず、その申立の理由とするところは、憲法第三二条違反とはいつているが、その実質は、要するに「上告趣意書差出期間経過後に差出された弁護人選人届によつては、その以…
事件番号: 昭和26(れ)1250 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法廷期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。
事件番号: 昭和60(す)230 / 裁判年月日: 昭和61年1月22日 / 結論: 棄却
上告棄却決定に対し弁護人選任届のない弁護士名義で意義申立書が提出された場合において、異義申立期間経過後にその弁護人選任届が追加提出されても、これによつて右の異議申立が適法有効となるものではない。
事件番号: 昭和26(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
被告人の上告した事件につき、上告趣意書が法定の期間内に原審弁護人から差出されても、その上告審における弁護人選任届の提出が右期間経過後であれば、有効なものとはならない。