一 辯護人選任屆なくして法定の期間内に提出した上告趣意書は、右期間經過後辯護屆を提出しても、遡つて適法なものとはならない。 二 第二審における辯護人は、原審辯護人として上告した場合でも、上告審の辯護人として選任せられない以上上告趣意書を提出することはできない。
一 上告趣意書提出期間經過後辯護屆を提出した辯護人の上告趣意書の効力 二 上告をした第二審辯護人と上告趣意書の提出
刑訴法423條,刑訴法379條,刑訴法41條,刑訴法42條
判旨
上告審における弁護人の選任は、上告趣意書の提出期間内に有効になされる必要があり、期間経過後の弁護届提出によって期間内の無権限な書面提出を追認することはできない。また、原審弁護人の上訴申立権は被告人の保護を目的とした独立の権限であり、上訴審での弁護権や趣意書提出権までを含むものではない。
問題の所在(論点)
上告趣意書提出期間内に書面を提出したものの、弁護届の提出が期間後となった場合に、当該趣意書は有効か。また、原審弁護人が上訴申立権に基づき上訴審で趣意書を提出できるか。
規範
上告趣意書の提出期間は、裁判所による調査研究や対手人の答弁機会確保等の適正かつ円滑な手続進行のために設けられたものであり、厳に遵守されなければならない。したがって、提出期間経過後に弁護届が提出された場合、期間内に弁護人でない者が提出した書面を遡って有効とすることは許されない。また、原審弁護人の上訴申立権(旧刑訴法379条)は被告人の利益保護のための特別の権限であり、上訴審における訴訟行為権限まで認める趣旨ではない。
重要事実
被告人の原審弁護人であった弁護士が、上告趣意書提出期間の末日に上告趣意書を提出したが、上告審における弁護届を提出したのは期間経過後であった。また、当該弁護士は原審弁護人の資格において、被告人とは別に独自に上告を申し立てていた。
あてはめ
本件において、弁護人は提出期間内に書面を提出しているが、その時点では有効な弁護届が提出されておらず、訴訟上の弁護人としての資格を欠いている。期間経過後の弁護届提出による追認を認めると、迅速な手続進行という提出期間の趣旨を達することができないため、当該趣意書は適法なものとは認められない。さらに、原審弁護人の上訴申立権は申立行為のみを認めた限定的な権限であり、上訴審における趣意書提出等の行為は、別途有効な選任がない限り認められない。
結論
本件上告趣意書は弁護人でない者が提出した不適法なものであり、裁判所はこれに対して判断を示す必要はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
上告審の弁護人選任の適時性と、原審弁護人の権限範囲を画した判例である。答案上は、期間徒過後の救済の可否や、弁護届未提出の状態で行われた訴訟行為の効力を論ずる際の基礎となる。特に「原審弁護人の申立権と上訴審での活動権限の区別」を明示する際に有用である。
事件番号: 昭和23(れ)402 / 裁判年月日: 昭和23年7月6日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法定期間を經過した後に差出された辯護人選任届によつては、その以前に差出された辯護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)一二九號同年六月一二日第二小法定判決)