所論再上告の申立は、昭和二四年四月二八日福岡高等裁判所の為した上告棄却の決定に対するものであり、従つて、判決に対するものでない点で不適法たるを免れない。しかのみならず、その申立の理由とするところは、憲法第三二条違反とはいつているが、その実質は、要するに「上告趣意書差出期間経過後に差出された弁護人選人届によつては、その以前期間内になされた同弁護人名義の上告趣意書の差出を有効ならしめることはできない。」とした原決定の判断を不当であるというに帰する。されば、仮りに所論申立が再抗告であるとしても、原決定のした単なる訴訟手続法上の判断を訴訟法上不当であると主張するに過ぎないものであるから、刑訴応急措置法第一八条所定の適法な再抗告理由ということはできない。
違憲と主張してもその実質は違憲の主張でない場合
憲法32条,旧刑訴法427条,刑訴応急措置法18条
判旨
上告趣意書の差出期間経過後に弁護人選任届が提出された場合、期間内に当該弁護人名義でなされた趣意書の提出を有効とすることはできない。
問題の所在(論点)
上告趣意書の差出期間内に提出された弁護人名義の趣意書について、期間経過後に弁護人選任届が提出された場合に、その趣意書の提出を有効なものとして取り扱うことができるか。弁護人選任の効力発生時期と訴訟行為の有効性が問題となる。
規範
訴訟手続の明確性と法的安定性の観点から、書面提出等の訴訟行為を行う者は、その行為時において適法な権限を有している必要がある。したがって、上告趣意書の差出期間内に提出された書面であっても、提出時点で弁護人としての資格が証明(選任届の提出)されていない場合には、期間経過後の選任届提出によってその瑕疵を追完し、当該趣意書の提出を有効ならしめることはできない。
重要事実
被告人の弁護人は、上告趣意書の差出期間内に弁護人名義で上告趣意書を提出した。しかし、当該弁護人の選任届が裁判所に提出されたのは、上告趣意書の差出期間が経過した後であった。原審(福岡高裁)は、期間経過後の選任届提出によって、期間内になされた趣意書提出を有効とすることはできないと判断し、上告棄却の決定をした。これに対し、弁護人が憲法32条違反等を理由に再上告(実質的には再抗告)を申し立てた事案である。
あてはめ
本件において、弁護人は上告趣意書の差出期間内に趣意書を差し出しているが、その時点では弁護人選任届が提出されておらず、訴訟法上の適法な弁護人としての地位が客観的に証明されていない。差出期間経過後に選任届が提出されたとしても、それは期間制限のある訴訟行為の有効性を事後的に回復させる理由にはならない。したがって、期間内になされた趣意書の差出しは無効なものと言わざるを得ず、原決定がこれを不当とした判断に誤りはない。また、この判断は単なる訴訟手続法上の解釈であり、憲法32条(裁判を受ける権利)に違反するものでもない。
結論
上告趣意書の差出期間経過後の弁護人選任届提出により、期間内の趣意書提出を有効にすることはできない。本件再上告(再抗告)は棄却される。
実務上の射程
弁護人による訴訟行為の前提として、選任届の提出時期が厳格に要求されることを示した。答案上では、上告趣意書のみならず、控訴趣意書の提出期限等の期間制限がある手続において、選任届の遅れが致命的な不利益を招く実務上の留意点として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和25(あ)568 / 裁判年月日: 昭和26年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁護人選任書の送達日付に誤記がある場合であっても、記録上弁護人が公判期日に出頭していることが明らかなときは、実質的な弁護権の行使を否定すべきではなく、手続上の違憲は認められない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決に対し、弁護人選任書の送達日付が昭和24年9月22日となっている点について、同年8…
事件番号: 昭和26(れ)1250 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法廷期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。