上告棄却決定に対し弁護人選任届のない弁護士名義で意義申立書が提出された場合において、異義申立期間経過後にその弁護人選任届が追加提出されても、これによつて右の異議申立が適法有効となるものではない。
上告棄却決定に対する異議申立につき弁護人選任届の追完が認められなかつた事例
刑訴法385条,刑訴法414条
判旨
弁護人選任届を提出していない弁護士が期間内にした異議の申立ては、期間経過後に選任届が提出されたとしても適法・有効になるものではない。
問題の所在(論点)
弁護人選任届が未提出のまま弁護士が行った異議申立ての有効性、および期間経過後の選任届提出による瑕疵の治癒の可否が問題となる。
規範
弁護人による訴訟行為が有効とされるためには、行為の時点で適法な弁護権限を有していることが必要である。したがって、申立期間内に弁護人選任届が提出されていない状態で行われた申立ては不適法であり、期間経過後に選任届が追完されたとしても、遡及的に有効な行為とは認められない。
重要事実
詐欺被告事件の上告棄却決定に対し、異議申立期間の最終日に弁護士が異議の申立てを行った。しかし、当該申立時において、その弁護士に係る弁護人選任届は提出されていなかった。申立期間が経過した2日後に、改めて弁護人選任届が裁判所に提出された。
事件番号: 平成5(し)170 / 裁判年月日: 平成6年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が選任した弁護人に十分な時間がありながら控訴趣意書を提出せず、期限当日に辞任した場合には、控訴棄却決定は有効であり、弁護権の侵害や手続の不備には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が自ら選任した私選弁護人が存在していた事案である。当該弁護人は、控訴趣意書の提出期限までに提出準備のための十分…
あてはめ
本件における弁護士の異議申立ては、期間内ではあるものの、適法な権限を証明する弁護人選任届の提出がないままなされた。刑事訴訟手続の明確性の観点から、弁護権限の有無は行為時に客観的に確認できる必要がある。期間経過後に選任届が提出されたとしても、既に期間を徒過した不適法な申立てを遡って有効とする根拠はなく、追完による治癒は認められない。
結論
本件異議申立ては不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
弁護士が刑事訴訟における各種申立てを行う際は、その行為時までに必ず弁護人選任届が裁判所に受理されていなければならない。実務上、期間ギリギリの申立ての際には選任の有無が厳格に判断されるため、追完による救済を期待することはできないと解すべきである。
事件番号: 昭和23(れ)402 / 裁判年月日: 昭和23年7月6日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法定期間を經過した後に差出された辯護人選任届によつては、その以前に差出された辯護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)一二九號同年六月一二日第二小法定判決)
事件番号: 昭和47(す)82 / 裁判年月日: 昭和47年6月22日 / 結論: 棄却
一 上告棄却決定に対し、原審弁護人のなした異議申立は、不適法である。 二 (注)右弁護人は、原審弁護人として上告趣意書を提出したものである(昭和四六年(あ)第二四九四号、昭和四七年六月一日第一小法廷決定、棄却)。
事件番号: 昭和42(す)278 / 裁判年月日: 昭和42年9月25日 / 結論: 棄却
上告棄却決定に対する異議申立について、申立書自体には何ら具体的理由が付されてなく、異議申立期間内に理由書の提出もないときは、刑訴法第四一四条、第三八六条第二項、第三八五条第二項、第四二六条第一項により申立を棄却すべきである。
事件番号: 昭和28(し)56 / 裁判年月日: 昭和30年2月23日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の弁護人に依頼する権利は、被告人が自ら行使すべきもので、裁判所は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければ足るものであること、同条項後段の規定は被告人が貧困その他の理由で弁護人を依頼できないときは国に対して弁護人の選任を請求できるものであり、国はこれに対して弁護人を附すれば足るも…