弁護人安井源吾提出の上告趣意書(論旨は刑訴四〇五条に該らす、上告適法の理由でない)は、同弁護人の選任に被告人の連署を欠きその選任を有効と認め難いから、受理することを得ない。結局本件上告につき指定期間内に趣意書の提出がないものというべきである。
被告人の連署を欠く弁護人選任届と上告趣意書の提出
刑訴法30条,刑訴法414条,刑訴法386条1項1号,刑訴規則18条
判旨
弁護人の選任届に被告人の連署を欠く場合、その選任は有効とは認められず、当該弁護人が提出した上告趣意書は受理されない。
問題の所在(論点)
被告人の連署を欠く弁護人選任届によって選任された弁護人による上告趣意書の提出が、有効な訴訟行為として認められるか。
規範
弁護人の選任は、被告人と弁護人となるべき者との連署による書面を提出して行わなければならない(刑訴規則17条1項参照)。この要件を欠く選任届に基づく弁護人の活動は、適法な選任によるものとは認められない。
重要事実
被告人の上告につき、弁護人が上告趣意書を提出した。しかし、当該弁護人の選任届には被告人の連署が欠けていた。そのため、指定期間内に適法な上告趣意書が提出されたかどうかが問題となった。
事件番号: 昭和26(あ)1189 / 裁判年月日: 昭和26年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の弁護人が選任されている場合において、被告人ごとに定められた主任弁護人に対して適法に公判期日の通知がなされていれば、主任弁護人以外の弁護人に対して通知がなされていなくとも、手続は適法である。 第1 事案の概要:被告人らには複数の弁護人が選任されていた。第一審の第5回公判以降、ある特定の弁護人(…
あてはめ
本件における弁護人の選任届には、被告人の連署が欠けている。このような選任届は、適法な選任手続を定めた規定に違反しており、有効な選任とは認められない。したがって、当該弁護人が提出した上告趣意書は、権限のない者によってなされたものとして受理することはできない。その結果、指定期間内に適法な趣意書の提出がなかったものと評価される。
結論
被告人の連署を欠く選任届による弁護人の選任は無効であり、その者が提出した上告趣意書は受理されず、上告棄却の決定を免れない。
実務上の射程
刑事訴訟における弁護人選任の厳格な要式性を確認した判例である。実務上、弁護人選任届の不備は訴訟行為の有効性に直結するため、答案作成上も書面提出の適法性を検討する際の基礎となる。なお、現在は刑訴規則により連署が明確に義務付けられているが、本判決はその解釈を裏付けるものである。
事件番号: 昭和26(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
被告人の上告した事件につき、上告趣意書が法定の期間内に原審弁護人から差出されても、その上告審における弁護人選任届の提出が右期間経過後であれば、有効なものとはならない。
事件番号: 昭和26(あ)380 / 裁判年月日: 昭和26年5月1日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき期間を経過した後に差出された弁護人選任届によつては、その以前に差出された弁護人名義の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一二九号、同年六月一二日第二小法廷判決、同年(れ)第四〇二号、同年七月六日第三小法廷決定)。
事件番号: 昭和26(あ)535 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意書提出期間経過後に提出された上告趣意追加申立については、裁判所はこれに対して判断をする必要はない。 第1 事案の概要:被告人の弁護人が上告趣意書を提出したが、その後、上告趣意書提出期間が経過してから上告趣意追加申立書を裁判所に提出した事案である。 第2 問題の所在(論点):上告趣意書提出期…
事件番号: 昭和26(あ)2670 / 裁判年月日: 昭和26年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の弁護人が憲法違反を主張して上告した場合であっても、具体的条項の明示がなく、実質的に刑訴法405条の上告理由に当たらないときは、適法な上告理由とは認められない。 第1 事案の概要:被告人両名の弁護人が上告を申し立てた事案。弁護人は上告趣意において憲法違反を主張したが、その具体的な条項を明示し…