刑訴第三九条第三項による検察官の接見の指定が起訴の日と同日であつたとしても、この事だけをもつて直ちに被告人の防禦の準備をする権利を不当に制限したものと断ずることはできない。
刑訴第三九条第三項による接見の指定が起訴の日と同日の場合と被告人の防禦権
刑訴法39条3項
判旨
検察官による接見指定の日時が起訴当日であったとしても、そのことのみをもって直ちに被告人の防御権を不当に制限したものとはいえず、当該接見指定前の自白等の証拠能力を当然に否定するものではない。
問題の所在(論点)
検察官による接見指定の日が起訴当日であった場合、それが直ちに被告人の防御権を不当に制限するものとして、当該指定期間中になされた供述等の証拠能力(任意性・信憑性)に影響を及ぼすか。
規範
検察官は、公訴提起前の被疑者に対し、捜査のため必要があるときは弁護人等との接見につき日時、場所及び時間を指定することができる(刑訴法39条3項)。この処分に不服がある場合は準抗告(同法430条)による救済が可能である。接見指定がなされたこと自体により、直ちに被告人の防御準備権が不当に制限されたと判断されるのではなく、個別具体的な状況に基づき検討されるべきである。
重要事実
被告人が起訴される前の被疑者段階において、検察官が刑訴法39条3項に基づき接見指定を行った。この接見指定に係る指定日が、結果として起訴の日と同日であった。弁護人は、このような接見指定は被告人の防御の準備をする権利を不当に制限するものであり、当該状況下でなされた検察官に対する供述は任意性や信憑性を欠くため、証拠として採用できないと主張した。
あてはめ
本件において、接見指定が起訴と同日であったとしても、刑訴法39条3項が認める適法な権限行使の一態様であり、不服があれば430条により救済を求める道も開かれている。被告人の公判廷における供述によれば、検察官に対する供述は任意になされたものと認められ、接見指定の事実のみをもって直ちに防御権の不当な制限があったとはいえない。したがって、当該手続に違法や違憲の瑕疵は認められない。
結論
接見指定が起訴と同日であっても、直ちに防御権の不当制限とはならず、それをもって自白の任意性・信憑性を否定し、証拠能力を欠くとすることはできない。
実務上の射程
接見指定制度(刑訴法39条3項)の合憲性・適法性を前提としつつ、接見指定の時期のみをもって直ちに自白の証拠能力を否定できないことを示した。答案上は、接見指定の適法性(「捜査のため必要があるとき」の解釈)と、その違反があった場合の証拠排除の可否を論じる際の前提として活用できる。ただし、本判決は昭和30年のものであり、その後の「即時接見」を重視する判例(最大判平11.3.24等)の文脈で再構成する必要がある点に留意する。
事件番号: 昭和31(あ)727 / 裁判年月日: 昭和31年8月3日 / 結論: 棄却
一 被告人とその弁護人との起訴前の接見交通に関し不当な制限措置が採られたとしても、これに対する救済は別に刑訴四三〇条、四三一条の規定に従い準抗告の方法によるべきものであつて、かかる制限措置自体に対する違憲の主張が刑訴四〇五条の上告理由とならないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第六五号同…