判旨
接見指定の運用が不当・違法であっても、そのことのみから直ちに当該供述の任意性や特信性が否定されるわけではなく、供述当時の状況に照らして判断すべきである。
問題の所在(論点)
検察官による違法な接見制限措置がなされた場合、その後に得られた被疑者供述の任意性・特信性(刑訴法321条1項2号等)は当然に否定されるか。
規範
接見指定(刑訴法39条)が不適切で被疑者の防御準備権を不当に制限し違法となる場合であっても、そのことだけで当然に供述の任意性や特別背信性が失われるわけではない。その有無は、供述をした当時の状況(被疑者の内心を含む)に照らして個別具体的に判断すべきである。
重要事実
検察官が身体拘束中の被疑者に対し、法律上の根拠がないにもかかわらず接見を「不許可」とした。さらに、過去の接見制限を遡及的に有効化するような内容の指定書を発付した。原審は、これらの一連の措置を違法・不当と認定した上で、被疑者の検察官に対する供述について、当該不当措置と供述との間に因果関係はなく、信用すべき特別の情況があると判断した。
あてはめ
本件における検察庁の「不許可」の意思表示や遡及的な接見指定は、刑訴法39条の趣旨に反し違法である。しかし、供述当時の状況を精査すると、当該不当措置が供述に直接的な影響を及ぼしたという因果関係は認められない。したがって、違法な接見制限下であっても、証拠その他の記録に基づき、当該供述が任意になされ、かつ信用すべき特別の情況があると認められる場合には、証拠能力は否定されない。
結論
接見制限が違法であっても、供述当時の状況から任意性・特信性が認められる限り、供述の証拠能力は認められる。本件上告は棄却される。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則が確立する前の古い判例(任意性説の時代)であるが、接見交通権侵害が供述の任意性に与える影響を判断する際の基準として今日でも言及される。ただし、現代の答案構成では、接見交通権侵害を理由とする「違法収集証拠」としての排除の構成も併せて検討する必要がある。
事件番号: 昭和31(あ)1104 / 裁判年月日: 昭和31年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見指定が不適切で被疑者の防御権を不当に制限し違法となる場合であっても、そのことのみで直ちに供述の任意性が否定されるわけではなく、証拠能力の有無は供述当時の状況に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aの検察官に対する各供述調書について、弁護人は検察官による接見指定が不当…