検察官には被疑者と弁護人との接見を禁止する権能のないことはいうまでもないことであり、接見の日時及び時間の指定が適切を欠き被疑者の防禦権を不当に制限する場合には、その指定は違法となり、時には被疑者の供述の任意性をも疑わしめるような状況を生じさせる場合もあり得る。しかし、右指定の不服申立については別に救済手続も認められているのであり(刑訴四三〇条以下)右指定の不法不当は、常に必ず被疑者の供述の任意性を疑わしめその証拠能力を当然に失わしめるものということはできないのであつて、その任意性の有無は、その供述をした当時の情況に照してこれを判断すべきものである(昭和二五年(あ)第一六五七号同二八年七月一〇日第二小法廷判決、集七巻七号一四七四頁参照)。
被疑者と弁護人との接見交通の指定が適切を欠いた場合と供述の任意性
刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,憲法38条1項
判旨
接見指定の不当・不法は、直ちに供述の任意性を否定し証拠能力を失わせるものではなく、任意性の有無は供述当時の状況に照らして判断されるべきである。検察官に接見を禁止する権能はないが、指定が防御権を不当に制限し違法となる場合であっても、それが常に供述の任意性を疑わしめるものではない。
問題の所在(論点)
検察官による接見指定が不当・不法である場合に、その期間中に得られた供述調書の任意性が否定され、証拠能力が失われるか。
規範
検察官による接見の日時・場所の指定(刑訴法39条3項)が適切を欠き、被疑者の防御権を不当に制限して違法となる場合であっても、そのことのみをもって常に供述の任意性を疑わしめ、証拠能力を当然に失わせるものではない。自白の任意性の有無は、供述をした当時の具体的な状況に照らして判断すべきである。
重要事実
被告人および共犯者Aの検察官に対する各供述調書の証拠能力が争われた事案。検察官による接見指定(原審では「接見禁止」と表現)が不当であり、防御権を制限した状態で得られた自白であるとして、その任意性および証拠能力が否定されるべきかが問題となった。
あてはめ
原審は、被告人らの検察官に対する各供述調書の内容と、記録から現れる事案の特質等を比較検討した上で、供述の任意性を肯定している。接見指定に不当な点があったとしても、不服申立等の救済手続が別途存在することに鑑みれば、直ちに供述当時の任意性を否定するまでの状況にあったとは認められない。
結論
接見指定が不当であっても直ちに証拠能力が失われるわけではなく、本件における供述の任意性の判断は相当であるため、証拠能力は認められる。
実務上の射程
接見交通権の侵害(違法な接見指定)と自白の任意性・証拠能力の関係を示す。接見侵害は「供述の任意性に疑いを生じさせる一つの状況」にはなり得るが、証拠能力を否定するためには、その侵害が供述を強制・誘導するような心理的圧迫として機能したか等の具体的検討が必要であることを示唆している。
事件番号: 昭和31(あ)1005 / 裁判年月日: 昭和31年10月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】接見指定の運用が不当・違法であっても、そのことのみから直ちに当該供述の任意性や特信性が否定されるわけではなく、供述当時の状況に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:検察官が身体拘束中の被疑者に対し、法律上の根拠がないにもかかわらず接見を「不許可」とした。さらに、過去の接見制限を遡及的に有効…