被告人とその弁護人との接見交通に関し所論のような不当があつたとしても、これがため原判決に影響を及ぼさないことは昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決〔集二巻八号八七二頁〕、同二三年(れ)第七七四号同年一一月一日大法廷判決〔集二巻一三号一六七九頁〕の趣旨に徴し明らかであり、また、これがため常に被疑者の供述の任意性を疑わしめその証拠能力を当然に失わしめるものということはできないのであつて、その任意性の有無は、その供述をした当時の状況に応じてこれを判断すべきものである。そして本件においては、記録に徴するも、被告人の検察官に対する供述調書に任意性を疑うべき点はないとした原審の判断は相当であるから、憲法第三四条、第三七条、第三八条違反の主張はその前提を欠き上告違法の理由とならない。
被告人と弁護人との接見交通に関し不当な制限が行なわれたことと原判決に対する影響の有無
憲法34条前段,憲法37条3項,憲法38条,刑訴法39条
判旨
接見交通に関し不当な制約があったとしても、そのことのみで直ちに被疑者の供述の証拠能力が否定されるわけではない。供述の任意性の有無は、供述当時の状況に照らして個別に判断すべきである。
問題の所在(論点)
接見交通権の不当な制限があった場合に、憲法31条や刑事訴訟法の規定に照らし、その後の取調べによって得られた供述調書の任意性および証拠能力が当然に否定されるか。
規範
接見交通に関する不適切な措置があったとしても、それが当然に被疑者の供述の任意性を疑わしめ、証拠能力を喪失させるものではない。供述の任意性は、当該供述がなされた当時の具体的な情況を総合的に考慮して判断されるべきである。
重要事実
被告人A及び弁護人は、捜査段階において被告人と弁護人との接見交通に関し不当な制約があったと主張し、そのような状況下で作成された検察官に対する供述調書は憲法違反であり証拠能力が認められないと争った。原審は、当該供述調書について任意性を疑うべき点はないと判断していた。
あてはめ
本件において、仮に弁護人が主張するように接見交通に関して不当な取扱いがあったとしても、その事実のみから直ちに供述の任意性が否定される結論は導かれない。記録によれば、被告人Aが検察官に対して供述を行った当時の情況を検討しても、当該供述の任意性を疑うべき具体的な事情は認められない。したがって、原審が供述調書の任意性を認めた判断は相当である。
結論
接見交通の制約があったとしても、供述当時の情況から任意性が認められる限り、当該供述調書の証拠能力は否定されない。
実務上の射程
接見交通権侵害と自白の証拠能力の関係についての判例である。実務上、接見制限のみを理由に証拠排除を勝ち取ることは困難であり、取調べの全過程における心理的不安や威迫の有無など、任意性に影響を及ぼす具体的事実を併せて主張する必要がある。違法収集証拠排除法則の観点からの議論とも関連するが、本判決は任意性の枠組みで処理している点に注意を要する。
事件番号: 昭和31(あ)886 / 裁判年月日: 昭和31年10月2日 / 結論: 棄却
検察官には被疑者と弁護人との接見を禁止する権能のないことはいうまでもないことであり、接見の日時及び時間の指定が適切を欠き被疑者の防禦権を不当に制限する場合には、その指定は違法となり、時には被疑者の供述の任意性をも疑わしめるような状況を生じさせる場合もあり得る。しかし、右指定の不服申立については別に救済手続も認められてい…