一 被告人とその弁護人との起訴前の接見交通に関し不当な制限措置が採られたとしても、これに対する救済は別に刑訴四三〇条、四三一条の規定に従い準抗告の方法によるべきものであつて、かかる制限措置自体に対する違憲の主張が刑訴四〇五条の上告理由とならないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決集二巻八号八七二頁、昭和二三年(れ)第七七四号同年一二月一日大法廷判決集二巻一三号一六七九頁参照) 二 右制限措置がなされたことからそれが直ちに被告人の捜査官に対してなした供述まで任意性を欠くものであるとは断定し得ないところであつて、その任意性の有無はその供述をした当時の諸般の情況に照してこれを判断すべきである。(昭和二五年(あ)第一六五七号、同二八年七月一〇日第二小法廷判決集七巻七号一四七四頁参照)
一 被告人と弁護人との起訴前の接見交通に関する不当な制限措置と上告理由 二 右制限措置と被告人の捜査官に対する供述の任意性
刑訴法39条,刑訴法319条,刑訴法430条,刑訴法431条,憲法38条
判旨
起訴前の弁護人との接見交通に対する不当な制限措置があったとしても、そのことのみから直ちに被疑者の供述の任意性が否定されるものではない。供述の任意性の有無は、供述当時の諸般の状況に照らして判断されるべきである。
問題の所在(論点)
起訴前に弁護人との接見交通が不当に制限された場合、その制限期間中に作成された被疑者の供述調書は、直ちに任意性を欠くものとして証拠能力を否定されるか。
規範
弁護人等との接見交通の制限措置がなされたとしても、それが直ちに捜査官に対してなした供述の任意性を欠くものと断定することはできない。供述の任意性の有無は、供述をした当時の諸般の状況に照らして個別に判断すべきである。
重要事実
被告人両名は、勾留直後から起訴直前まで接見禁止処分を受けていた。弁護人との接見交通が指定された日時は起訴当日であったため、事実上、起訴後になるまで弁護人と接見することができない状態に置かれた。被告人側は、このような不当な接見交通の制限下で作成された供述調書は、憲法34条に違反し、任意性を欠くため証拠能力が認められないと主張した。
あてはめ
本件において被告人側は、接見禁止措置という防御権の制限が供述の任意性に影響を及ぼすと主張するが、接見制限自体の違法救済は準抗告(刑訴法430条等)によるべき事由である。供述の任意性の判断にあたっては、接見制限の事実のみを決定打とするのではなく、供述当時の具体的な状況を総合的に考慮すべきところ、原審が諸般の状況を考慮して任意性を認めた判断は相当であるといえる。
結論
接見交通の不当な制限があったとしても、直ちに供述の任意性が否定されるわけではなく、本件供述調書の証拠能力を認めた原判断は正当である。
実務上の射程
接見制限と自白の任意性の関係について示した判例である。答案上は、接見交通権侵害がある場合でも、即座に証拠排除を導くのではなく、あくまで「任意性に疑いを生じさせる一つの状況」として位置づけ、取調べの時間や態様など他の状況とあわせて総合考慮する枠組みで論じる際に用いる。
事件番号: 昭和31(あ)1104 / 裁判年月日: 昭和31年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による接見指定が不適切で被疑者の防御権を不当に制限し違法となる場合であっても、そのことのみで直ちに供述の任意性が否定されるわけではなく、証拠能力の有無は供述当時の状況に照らして判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人Aの検察官に対する各供述調書について、弁護人は検察官による接見指定が不当…