判旨
検察官による接見指定が不適切で被疑者の防御権を不当に制限し違法となる場合であっても、そのことのみで直ちに供述の任意性が否定されるわけではなく、証拠能力の有無は供述当時の状況に照らして判断すべきである。
問題の所在(論点)
検察官による接見指定(刑訴法39条3項)が不適切で被疑者の防御権を不当に制限し違法である場合、その期間中になされた自白の任意性は当然に否定され、証拠能力を失うか。
規範
検察官が行う接見の日時及び場所の指定(刑訴法39条3項)が適切を欠き、被疑者の防御権を不当に制限する場合には、当該指定は違法となる。もっとも、接見指定の不当・不法が常に当然に供述の任意性を失わせるものではない。自白の証拠能力(同法319条1項)を左右する任意性の有無は、当該供述がなされた当時の諸状況を総合的に考慮して判断されるべきである。
重要事実
被告人Aの検察官に対する各供述調書について、弁護人は検察官による接見指定が不当であり防御権を制限したものであると主張し、当該調書の証拠能力を争った。原審は、接見指定の経緯等を踏まえつつも、諸状況から当該供述の任意性を肯定し、かつ公判期日の供述よりも信用すべき特信状況(同法321条1項2号)があると認めて証拠として採用した。
あてはめ
本件において、検察官の接見指定が被疑者の防御準備権を不当に制限し、違法な状態が生じていた可能性はある。しかし、接見指定の不法については刑訴法430条以下の準抗告等による救済手続が別途用意されている。したがって、接見制限という事実のみから直ちに供述の不任意性を推定すべきではなく、当該供述がなされた際の具体的な心理的・物理的状況に照らして、任意性に疑いがあるか否かを個別具体的に判断すべきである。原審が記録に基づき任意性を肯定した判断は相当である。
結論
接見指定の違法が直ちに自白の任意性を否定し証拠能力を失わせるものではない。本件では供述当時の状況から任意性が認められるため、証拠能力を認めた原判断に違法はない。
実務上の射程
接見交通権の侵害があった事案において、自白の証拠能力を争う際の基準を示す。接見制限それ自体は「不当な抑圧」の一要素にはなり得るが、決定的な証拠排除事由とはならない。答案上は、接見指定の違法性と自白の任意性の判断を切り分けつつ、違法な接見制限が心理的圧迫として任意性を欠く要因となったかという文脈で論じる必要がある。
事件番号: 昭和41(あ)933 / 裁判年月日: 昭和41年10月6日 / 結論: 棄却
被告人とその弁護人との接見交通に関し所論のような不当があつたとしても、これがため原判決に影響を及ぼさないことは昭和二三年(れ)第六五号同年七月一四日大法廷判決〔集二巻八号八七二頁〕、同二三年(れ)第七七四号同年一一月一日大法廷判決〔集二巻一三号一六七九頁〕の趣旨に徴し明らかであり、また、これがため常に被疑者の供述の任意…