被告人は昭和二七年一〇月一四日逮捕せられて引続き勾留せられていたのであるが、その勾留期間中検事から弁護人に対して接見のための日時として同年一〇月二六日午前九時から午後五時迄を指定された。しかるに本件の起訴状が提出されたのは同年一一月八日であるから、右起訴前においても弁護権の活動は発揮し得たものというべく、検察官の接見指定に関する措置が所論のように被疑者の防禦権を不当に制限したものとは解されない。
刑訴第三九条第三項による接見の指定が起訴前一回の場合と被疑者の防禦権
刑訴法39条3項
判旨
検察官による接見日時の指定が、起訴前の勾留期間中に弁護権の活動を可能とする相当な範囲内で行われている場合には、被疑者の防御権を不当に制限するものとはいえず、憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
検察官が行った接見日時の指定が、起訴前の期間において弁護権の活動を不当に制限し、憲法が保障する被告人の防御権を侵害するものであるか。
規範
検察官による接見日時の指定(刑事訴訟法39条3項)が適法とされるためには、その措置が被疑者の防御権を不当に制限するものではなく、起訴前においても弁護権の活動を実質的に発揮し得る機会を保障していることを要する。
重要事実
被告人は昭和27年10月14日に逮捕・勾留された。検察官は弁護人に対し、同年10月26日の午前9時から午後5時までを接見日時として指定した。その後、被告人が起訴されたのは同年11月8日であった。弁護人は、起訴直前まで接見禁止と同様の状態に置かれ、起訴と同日に初めて接見が指定されたとして、防御権の不当な制限による違憲を主張した。
あてはめ
本件において、検察官が指定した接見日時は10月26日であり、実際の起訴日である11月8日よりも相当程度前の段階である。したがって、起訴前においても弁護権の活動を発揮する余地は十分に確保されていたといえる。弁護人が主張する「起訴直前まで接見が制限された」という事実は記録上認められず、検察官の措置が防御権を不当に制限した事実は認められない。
結論
本件の接見指定は適法であり、被告人の防御権を不当に制限したものではないため、憲法違反には当たらない。
実務上の射程
接見指定の適法性判断において「防御権の不当な制限」の有無を基準とする実務の先駆けといえる。答案上は、指定された日時から起訴までの猶予期間に着目し、弁護準備の機会が実質的に確保されているかを論理的に示す際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)727 / 裁判年月日: 昭和31年8月3日 / 結論: 棄却
一 被告人とその弁護人との起訴前の接見交通に関し不当な制限措置が採られたとしても、これに対する救済は別に刑訴四三〇条、四三一条の規定に従い準抗告の方法によるべきものであつて、かかる制限措置自体に対する違憲の主張が刑訴四〇五条の上告理由とならないことは当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二三年(れ)第六五号同…