判旨
公職選挙法等における買収資金等の受交付罪と、その後に行われる実際の買収罪は、それぞれ別個の法益を侵害する行為として成立し得る。時間的・場所的に接着し、同一の目的で行われた窃盗行為等が包括一罪となる事例とは事案の性質が異なり、各行為を個別に評価すべきである。
問題の所在(論点)
公職選挙法違反等において、買収資金の受交付行為と、その後の実際の買収行為との罪数関係が問題となる。また、短時間・同一機会の窃盗事案等に関する包括一罪の判理が、買収事案において適用されるべきか。
規範
複数の行為が単一の犯罪(包括一罪)を構成するか、あるいは別個の犯罪を構成するかは、行為の態様、時間的・場所的な近接性、及び侵害される法益の同一性に基づいて判断される。単一の機会を利用して短時間に行われた窃盗等の既決判例の法理は、買収資金の受領と買収の実行という、犯罪の段階が異なる行為の関係には直ちに適用されない。
重要事実
被告人は、選挙に際して買収資金の交付を受けた(受交付の行為)。その後、交付された資金を用いて実際に選挙人らに対して買収行為を行った。弁護人は、これら一連の行為は不可分であり、先行する受交付行為と後の買収行為を別個の罪として問うことは法令の解釈を誤ったものであるとして、包括一罪的な処理を求めて上告した。
あてはめ
最高裁は、先行事例(魚類の採捕行為や短時間内の連続窃盗)と比較し、本件の受交付と買収の関係はこれらと性質が異なると判示した。窃盗罪のように同一機会に同種の法益を繰り返し侵害する場合とは異なり、受交付は買収の準備的・資金的背景をなす行為であり、その後の買収実行とは行為の局面が異なる。したがって、原審がこれらを単純な一個の行為として扱わなかった判断に誤りはないといえる。
結論
受交付の行為と買収の行為は別個の犯罪を構成し得ると解されるため、原判決の判断は相当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
罪数論において、一連の密接な行為が包括一罪になるか併合罪(または各別の行為)になるかを論じる際の境界線として機能する。特に準備的な性質を持つ罪と実行行為の関係において、行為の性質が異なれば包括一罪にはならないことを示唆している。
事件番号: 昭和30(あ)1837 / 裁判年月日: 昭和30年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙運動の報酬とその他の名目(祝儀等)が混在して一括授受された場合、その授受が不可分的である限り、授受された金員全額について公職選挙法違反罪(買収罪・利害誘導罪)が成立する。 第1 事案の概要:被告人らが、選挙運動の報酬等の趣旨で金員を授受した際、その名目の中に「ゑびす祝」という祝儀としての名目も…