判旨
被告人が不当に長く勾留されているという事実のみでは、直ちに原判決を違法とする理由にはならず、判決の基本となった審判手続に違法があったともいえない。
問題の所在(論点)
被告人が不当に長く勾留されているという事実が、刑事訴訟法上の上告理由(判決の違法または審判手続の違法)に該当するか。
規範
被告人に対する勾留期間が不当に長い場合であっても、そのことのみをもって直ちに原判決自体を違法と断じることはできず、また、判決の前提となる審判手続に当然に違法が生じるとも解されない。
重要事実
被告人は勾留されていたが、その勾留期間が不当に長いと主張して上告した。弁護人は、この長期勾留が憲法に違反し、判決に影響を及ぼす違法があると主張したが、原判決のどの点がどのように憲法に違反するかを具体的に示していなかった。なお、具体的な起訴事実の内容は判決文からは不明である。
あてはめ
本件において被告人が主張する「勾留期間が不当に長い」という事実は、勾留という身体拘束の適否に関する問題にすぎない。かかる身体拘束の長期化は、有罪無罪の判断や量刑の基礎となる「原判決自体」を直ちに違法とするものではない。また、勾留の継続は裁判手続の付随的事項であり、証拠調べや公判審理といった「審判の手続」の根幹を直ちに違法ならしめる性質のものでもない。したがって、具体的な判決への影響が示されない限り、上告理由とは認められない。
結論
勾留の長期化という事実だけでは、原判決の違法や審判手続の違法を導くことはできず、適法な上告理由とはならない。
実務上の射程
身体拘束の適法性と判決の適法性は別個の次元であることを示した判例である。答案上では、公訴提起後の身体拘束の不当さを理由に判決の取り消しを求める主張に対して、本判例を引用して否定的に論じる際に活用できる。ただし、迅速な裁判の保障(憲法37条1項)を侵害するほどの極端な遅延がある場合には、別途検討の余地があることに留意が必要である。
事件番号: 昭和28(あ)383 / 裁判年月日: 昭和30年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成を備えた裁判所を指し、個々の事件における事実認定の当否自体を指すものではない。 第1 事案の概要:被告人が、原審(控訴審)において第一審判決が維持されたことに対し、原審は予断を抱いて安易に控訴を棄却したものであり、公…
事件番号: 昭和42(あ)2007 / 裁判年月日: 昭和43年2月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の迅速が欠かれたとしても、その一事のみをもって直ちに原判決を破棄すべき理由にはならない。憲法37条1項の迅速な裁判を受ける権利の侵害については、遅延の具体的状況に基づき判断されるべきである。 第1 事案の概要:被告人Bは、第一審判決における証拠関係に関し、自白の補強証拠の欠如(憲法38条3項違…
事件番号: 昭和37(あ)1868 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律の委任に基づき政令で罰則(犯罪構成要件および刑)を設けることは憲法73条6号但書により許容される。また、不当に長い拘禁後の自白(憲法38条2項)に該当するかは、身柄拘束の経緯、事案の複雑性、自白の時期等を総合して判断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は外国為替及び外国貿易管理法違反の罪に…
事件番号: 昭和37(あ)1443 / 裁判年月日: 昭和37年11月15日 / 結論: 棄却
一 弁護人の所論各点に関する原審の判断は正当として首肯できる。 二 (原判決の要旨)時計の如くその銘柄、型式、石数、側等による種別の多数に上る品物にあつては、それらによつて他から完全に区別し得る程度に表示するのは甚だ困難であつて、判決にこれを表示するに当つては、要するに被告人が同一物につき再度起訴される虞れがなく、又そ…