判旨
職業安定法63条2号にいう「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的での職業紹介とは、形式的な職種名に関わらず、実態として職業的売淫の業務に就かせる約旨で斡旋を行うことを指す。
問題の所在(論点)
職業安定法63条2号の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介等をした者」という要件において、名目上は合法的な職種であっても、実態として売春等を行わせる目的がある場合に同罪が成立するか。
規範
職業安定法63条2号の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に該当するか否かは、単なる職種名や名目上の雇用形態ではなく、当事者間において実際にどのような業務に従事させる合意(約旨)があったかという実態に基づき判断すべきである。特に、職業的売淫の業務に就かせる目的がある場合には、同号の有害な業務に該当する。
重要事実
被告人は、8名の婦女子を「特殊料理店の従業婦」という名義で募集した。しかし、その実態は、何れも実際上は職業的売淫の業務に就かせるという約旨(合意)の下で、当該特殊料理店への就職を斡旋したものであった。弁護人は、特殊料理店の従業婦そのものが直ちに対象業務に当たるわけではないとして違憲および法令違背を主張し、上告した。
あてはめ
本件において、被告人は従業婦名義で斡旋を行っているが、判示された事実によれば、被告人と被紹介者との間には「実際上職業的売淫の業務に就かせる」という明確な約旨が存在していた。職業的売淫は、社会通念上、明らかに公衆道徳を害する業務といえる。したがって、形式的な職種が特殊料理店の従業婦であったとしても、その斡旋の目的が売淫業務にある以上、法63条2号の「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」に合致すると評価される。
結論
被告人の行為は職業安定法63条2号に該当し、同罪が成立する。本件上告を棄却する。
実務上の射程
労働法・刑事法における「有害業務」の判断が、形式的な職種名に拘束されず、実態的な業務内容や当事者の主観的意図(約旨)によって決することを明示したものである。答案上は、脱法的な形式を採る事案において、実態に即して規範をあてはめる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和33(あ)1686 / 裁判年月日: 昭和36年12月6日 / 結論: 棄却
弁護人の上告趣意は、職業安定法六三条二号が罪の内容を定めるのに「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で」といつているのは、罪となるべき行為の定め方があいまいであつて、罪刑法定主義を規定した憲法三一条に違反すると主張する。しかし、第一審判決の確定した事実によれば、本件は、すべて売春を業とする接客婦の雇用をあつ旋…
事件番号: 昭和28(あ)1601 / 裁判年月日: 昭和28年10月15日 / 結論: 棄却
一 第一審では職業安定法六三条二号を適法に適用処罰している。すなわち、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な事務に就かせる目的で、職業紹介……を行つた者」として処罰されたのである。その職業紹介が有料の職業紹介事業を行つたか(同法三二条一項本文)、無料の職業紹介事業を行つたか(同法三三条一項)は本件には関係がない。 二 第一審判…