論旨は職業安定法六三条二号が憲法一四条に違反すると主張する。しかし職業安定法六三条二号は職業紹介、労働者の募集若しくは労働者の供給の適正を期するために設けられた規定であつて、この目的に背き同法条に違反するものは何人といえどもひとしくこれによつて処罰せられ、その間何等の差別もなされない。されば所論違憲の主張はその前提を欠き採用できない。
職業安定法第六三条二号と憲法第一四条。
職業安定法63条2号,憲法14条
判旨
売淫は公衆衛生または公衆道徳上有害な業務であり、これに従事させる目的での職業紹介は職業安定法63条2号の処罰対象となる。また、同条項は適正な職業紹介等の実現を目的とするもので、何人にも等しく適用されるため憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
売淫が職業安定法63条2号に規定される「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に該当するか。また、同条項を適用して処罰することが憲法14条の法の下の平等に反しないか。
規範
職業安定法63条2号にいう「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」とは、社会通念上、公衆の健康保持や健全な道徳秩序を害するおそれのある業務を指す。また、同条項による処罰は、職業紹介等の適正化という合理的目的に基づき、違反者に対して無差別に適用されるものである限り、法の下の平等に反しない。
重要事実
被告人は、婦女をして売淫(売春)に従事させる目的で職業紹介を行った。一審判決は、この行為を「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に就くことを内容とする職業紹介に当たるとして、職業安定法63条2号を適用し被告人を処罰した。これに対し被告人側は、売淫が同号の業務に当たるとするのは法令違反であり、かつ同条項の適用は憲法14条の平等原則に反すると主張して上告した。
あてはめ
売淫は、その性質上、性病の蔓延等の公衆衛生上の危機を招くおそれがあり、かつ健全な公衆道徳を著しく害するものであるから、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に該当すると評価できる。また、職業安定法63条2号の規定は、職業紹介や労働者募集の適正を期するという合理的な行政目的のために設けられており、当該目的に背く者であれば属性を問わず一律に処罰の対象となる。したがって、特定の個人を不当に差別するものではないといえる。
結論
被告人の行為は職業安定法63条2号に該当し、同条項の適用は憲法14条に違反しない。
実務上の射程
職業安定法上の「有害業務」の解釈指針として活用できる。特に、風俗営業等に関連する事案において、公共の福祉による職業の自由や営業の自由の制限が問題となる局面で、憲法14条や22条1項に関連させた判断の枠組みとして参照される。
事件番号: 昭和30(あ)1651 / 裁判年月日: 昭和30年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】職業安定法63条2号にいう「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に就かせる目的での職業紹介とは、形式的な職種名に関わらず、実態として職業的売淫の業務に就かせる約旨で斡旋を行うことを指す。 第1 事案の概要:被告人は、8名の婦女子を「特殊料理店の従業婦」という名義で募集した。しかし、その実態は、何れも…