職業安定法第六三条二号は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介等を行つた者又はこれらに従事した者を処罰する規定であり、昭和二七年法律八一号により法律として効力を有する昭和二二年勅令九号二条は、婦女に売淫させることを内容とする契約をした者を罰する規定である。両者は取締の目的及び違反行為の内容性質を異にするものであり、また、たとえ就業先が風俗営業取締法及び同法項条例等によつて許可され比較的設備や衛生等に注意されている貸席営業であつても、実際的に売淫をさせて収益を図ることを当初からの約旨として周施料をとり、多数婦女を右営業に就職させる契約をした者は、職業安定法六三条二号にいわゆる公衆衛生又は公衆道徳条有害な業務に就かせる目的で、職業紹介を行つた者に該当すると解するを相当とする。それ故に論旨は採ることを得ない。
職業安定法第六三条第二号と昭和二二年勅令第九号第二条との関係
職業安定法63条2号,婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する件(昭和22年勅令9号2条),昭和27年法律81号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律),昭和27年法律137号(ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律)1条2号
判旨
売淫を目的とする職業紹介は、就業先が法令に基づき許可された貸席営業であっても、職業安定法上の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」に該当する。
問題の所在(論点)
法令により許可された営業施設(貸席営業等)への紹介であっても、売淫を目的とする場合は、職業安定法63条2号の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」への職業紹介に該当するか。
規範
職業安定法(旧63条2号)にいう「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務」とは、実際的に売淫させて収益を図ることを内容とする業務を指し、たとえ就業先が風俗営業等の許可を受けた施設であっても、当初から売淫を約旨としている場合はこれに該当する。
重要事実
被告人は、風俗営業取締法等の条例に基づき許可され、設備や衛生面で一定の配慮がなされていた貸席営業所に対し、多数の婦女を就職させる契約を締結した。しかし、その実態は、当初から婦女に売淫をさせて収益を得ることを目的として周旋料を受け取るものであった。
あてはめ
本件における就業先の貸席営業は、形式的には法令の許可を得た適法な施設に見える。しかし、被告人の行為は、実際的に売淫させて収益を図ることを当初からの約旨として周旋料を取り、多数の婦女を就職させるものであった。売淫は、その施設の許可の有無にかかわらず、公衆道徳を著しく害する行為であるといえる。したがって、実質的に売淫を目的とする本件紹介行為は、同法が禁止する有害業務への紹介に当たると解される。
結論
許可を受けた営業施設への紹介であっても、売淫を目的とする以上、職業安定法63条2号に該当し、処罰の対象となる。
実務上の射程
形式的な営業許可の有無にかかわらず、紹介される業務の実態が公衆道徳に反するか否かで判断すべきことを示した。労働法・刑法が交錯する分野において、公序良俗に反する業務の定義を明確にする際に応用可能である。
事件番号: 昭和28(あ)4787 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
職業安定法にいう職業紹介とは、求人および求職の申込を受けて本人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも、雇用関係の現場にあつて直接これに関与介入するのは要はないと解すべきである。