職業安定法第五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法第六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的、精神的労務を供給する関係にあればたりるものと解するのを相当する。
職業安定法第五条にいわゆる「雇用関係」の意義
職業安定法5条1項
判旨
職業安定法5条にいう「雇用関係」とは、民法上の雇用に限定されず、社会通念上、被用者が有形無形の経済的利益を得て、一定の条件の下で使用者に労務を供給する関係を広く含む。
問題の所在(論点)
職業安定法5条における「雇用関係」の意義、および接待婦等の紹介行為が同法の処罰規定の対象となるか。
規範
職業安定法5条にいう「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法623条の意義に解すべきものではない。広く社会通念上、被用者が有形無形の経済的利益を得て、一定の条件の下に使用者に対して肉体的、精神的労務を供給する関係にあれば足りる。
重要事実
被告人は、いわゆる接待婦等を業者に紹介する業務を行っていた。この紹介行為が、職業安定法63条(有料職業紹介の禁止)や64条(有害業務目的の紹介禁止)等の罰則規定の適用対象となるかが争われた。弁護側は、当該接待婦等と業者との関係は自由な放任業務であり、同法にいう「雇用関係」には当たらないとして、同法の適用外であると主張した。
あてはめ
職業安定法は労働力充足のみならず、広く職業の安定を図ることを目的としている。本件における接待婦等と業者の関係は、社会通念上、婦女が経済的利益を得る代わりに、一定の条件(場所や形態)の下で業者に対し肉体的・精神的労務を供給するものといえる。したがって、民法上の厳格な雇用契約の形式を備えていなくても、同法上の「雇用関係」に当たると解するのが相当であり、これを有料で紹介し、または公衆道徳上有害な業務に就かせる行為は、同法63条、64条に抵触すると評価される。
結論
被告人の行為は職業安定法上の職業紹介に該当し、同法の各処罰規定に違反する。また、公共の福祉による制限を受ける職業選択の自由(憲法22条)にも反しない。
実務上の射程
労働法規や行政規制における「雇用」概念を、民法上の定義(契約類型)よりも広く「実態」に即して解釈する際の根拠となる。職業安定法違反の成否を検討する際、雇用契約の成否を形式的に判断せず、労務供給と対価の経済的実態から判断する枠組みとして有用である。
事件番号: 昭和28(あ)4787 / 裁判年月日: 昭和30年10月4日 / 結論: 棄却
職業安定法にいう職業紹介とは、求人および求職の申込を受けて本人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも、雇用関係の現場にあつて直接これに関与介入するのは要はないと解すべきである。