判旨
待合業者と接客婦との間に成立する関係は、職業安定法5条1項に規定される「雇用関係」に該当する。また、同法に基づく処罰規定を適用することは、憲法22条(職業の選択の自由)や憲法31条(適正手続)に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 待合業者と接客婦との関係が職業安定法5条1項の「雇用関係」に該当するか。 2. 職業安定法違反罪の成立を認めることが、憲法22条の職業の選択の自由や憲法31条の適正手続に反しないか。
規範
職業安定法5条1項にいう「雇用関係」とは、一方が相手方の指揮監督の下に労働を提供し、これに対して報酬を支払う関係を指し、形式的な契約形態にかかわらず、実質的な労務提供の態様によって判断される。また、公共の福祉のために必要な職業紹介事業の制限は、憲法22条1項により許容される範囲内である。
重要事実
被告人が、接客婦を待合業者に斡旋した行為が職業安定法違反(無許可の職業紹介等)に問われた事案である。被告人側は、待合業者と接客婦との関係は同法5条1項の「雇用関係」に該当せず、本罪の成立を認めることは憲法22条および31条に違反すると主張して上告した。
あてはめ
待合業者と接客婦との関係は、接客婦が待合業者の場所的・組織的支配下で労務(接客)に従事するものであり、実質において労働の対価を得る関係にある。これは、同法が保護・規制の対象とする「雇用関係」に他ならない。したがって、これに係る職業紹介行為を規制することは、労働市場の適正化という公共の福祉に基づく正当な目的があり、憲法22条に違反しない。また、法の解釈として明確であり憲法31条の求める適正手続にも反しない。
結論
待合業者と接客婦との関係は「雇用関係」に該当し、職業安定法違反罪の成立を肯定した原判決に憲法違反や解釈の誤りはない。上告棄却。
実務上の射程
労働法および刑法が交錯する領域において、「雇用関係」を形式的な民法上の雇用契約に限定せず、実態に即して広範に捉えるべきとする射程を有する。労働供給事業や職業紹介の可罰性を判断する際、提供される労務の実態が指揮監督下にあるかを重視する判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1298 / 裁判年月日: 昭和31年3月23日 / 結論: 棄却
職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に、使用者に対し、肉体的精神的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するのが、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(あ)第三六二六号同二九年三月一…