職業安定法三二条一項、六四条一号の規定が憲法二二条一項、二七条に違反しないとされた事例
憲法22条1項,憲法27条,職安法32条1項,職安法64条1号
判旨
職業安定法における有料職業紹介事業の許可制および無許可営業に対する罰則規定は、憲法22条1項の職業選択の自由および憲法27条に違反しない。公共の福祉に基づく正当な目的による合理的かつ必要な制限であるとした従前の判例を維持した。
問題の所在(論点)
職業安定法32条1項による有料職業紹介事業の許可制および同法64条1号の罰則規定が、憲法22条1項の職業選択の自由および27条に反し違憲ではないか。
規範
職業の自由に対する制限が、公共の福祉を理由として憲法22条1項に基づき許容されるためには、その制限が社会公共の利益のために必要かつ合理的であることを要する。特に労働力の需給を調整する職業紹介事業については、求職者の保護および適正な労働条件の確保という観点から、許可制による規制およびこれに違反した場合の刑罰規定を設けることは、立法府の裁量の範囲内にある合理的制限である。
重要事実
被告人は、職業安定法32条1項(当時の規定)に基づく許可を受けずに、有料で職業紹介事業を行ったとして、同法64条1号違反の罪に問われた。弁護人は、有料職業紹介事業を原則禁止し許可制とする規定、およびその違反に対する罰則が、憲法22条1項(職業選択の自由)および27条(勤労権等)に違反し、不当な制限であるとして違憲を主張し上告した。
あてはめ
最高裁判所は、過去の判例(昭和25年6月21日大法廷判決)を引用し、職業安定法の規制目的が求職者の不当な搾取を防止し、労働市場の適正な運用を確保するという公共の福祉に合致するものであると解した。この目的に対し、無許可での営業を禁止し罰則を科すことは、目的達成のための必要かつ合理的な手段といえる。したがって、当該規定は憲法が許容する範囲内の制約であり、憲法22条1項および27条に違反するものではないと判断した。
結論
職業安定法32条1項および64条1号は憲法に違反しないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
消極的目的(警察的制限)か積極的目的(社会経済政策的制限)かの区分以前に、労働者保護という強い公共の福祉の要請がある分野では、許可制という強力な制限も合憲とされやすい。答案上は、職業の自由の制限が「公共の福祉」による合理的制限であるかを論じる際の基準として、目的の正当性と手段の合理性・必要性を構成する際の論拠として使用できる。
事件番号: 昭和24新(れ)7 / 裁判年月日: 昭和25年6月21日 / 結論: 棄却
在來の自由有料職業紹介においては營利の目的のため、條件等の如何に拘わらず、ともかく契約を成立せしめて報酬を得るため、更に進んでは多額の報酬を支拂う能力を有する資本家に奉仕するため、勞働者の能力、利害、妥當な勞働条件の獲得、維持等を顧みることなく、勞働者に不利益な契約を成立せしめた事例多く、これに基因する弊害も甚しかつた…