職業安定法三二条一項が憲法一三条、二二条一項に違反しないとされた事例
憲法13条,憲法22条1項,職安法32条1項
判旨
有料職業紹介事業を許可制とする職業安定法32条1項(当時)の規定は、公共の福祉による適正な制限として、憲法13条及び22条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
有料職業紹介事業を原則禁止し、許可制(当時の職業安定法32条1項)とする法的規制が、憲法22条1項(職業選択の自由・営業の自由)及び13条(幸福追求権)に抵触し、違憲とならないか。
規範
職業の自由に対する制限が、公共の福祉のために必要かつ合理的な範囲内にとどまる限り、当該制限を定めた法令は憲法22条1項に違反しない。特に、社会的経済的弱者である労働者の保護や雇用秩序の維持を目的とする制限は、公共の福祉による正当な制約として合憲とされる。
重要事実
被告人が有料職業紹介事業を無許可で行ったとして、職業安定法32条1項違反により起訴された事案。被告人側は、同条項による事業の許可制が営業の自由を侵害し、憲法13条及び22条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本判決は詳細な事実認定や具体的あてはめを省略し、昭和25年6月21日の大法廷判決を引用する形で判断を下している。同大法廷判決の論理によれば、職業紹介事業には中間搾取や強制労働等の弊害が生じやすく、労働者の自由と生存を確保するためには、許可制による厳格な監督が必要不可欠である。したがって、本件における許可制の規定も、労働者保護という公共の福祉を達成するために必要かつ合理的な制限といえる。
結論
職業安定法32条1項は憲法13条、22条1項に違反しない。したがって、無許可で同事業を行ったことに対する刑事罰の適用は適憲である。
実務上の射程
職業の自由を制限する「許可制(強い規制)」であっても、労働者保護などの社会的・政策的目的(消極的・積極的目的の混在)に基づく場合は、判例が広範な立法裁量を認める傾向にあることを示す。答案上は、二重の基準論を前提としつつも、当該規制が労働市場の適正化という重要な公共の利益に資することを指摘する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3272 / 裁判年月日: 昭和30年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有料職業紹介事業を原則として禁止する職業安定法32条(当時)の規定は、公共の福祉による正当な制限であり、憲法22条1項および13条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、有料職業紹介事業を原則禁止し許可制をとる職業安定法32条(当時の規定)に違反したとして起訴された。これに対し、被告人側は当該…