判旨
淫売婦と抱主との契約関係が、職業安定法(昭和22年法律第141号)5条1項に規定される「雇用」関係に該当するか。
問題の所在(論点)
職業安定法5条1項の「雇用」の意義と、公序良俗に反する契約に基づく労働実態の包摂性。
規範
職業安定法上の「雇用」とは、報酬を支払って労働に従事させる関係を指し、その契約の目的が公序良俗に反する等の瑕疵がある場合であっても、事実に即して労働力の需給調整を図るという同法の目的から、労働の提供と対価の支払という実態がある限り、同法5条1項の「雇用」に該当する。
重要事実
被告人と淫売婦(売春婦)との間には、いわゆる抱主(雇用主側)と被雇用者としての契約関係が存在していた。この関係に基づき、女性を淫売業務に従事させ、その対価を収受する等の実態があった。弁護人は、このような公序良俗に反する違法な関係は職業安定法上の「雇用」には当たらないと主張して上告した。
あてはめ
淫売婦と抱主との間の関係は、その業務内容が売春という反社会的なものであっても、抱主が女性を自己の支配下に置いて労働に従事させ、報酬(収益の分配)を支払うという構造を有している。これは実質において労働力を供給し利用する関係に他ならない。したがって、かかる関係は職業安定法5条1項にいう「雇用」に当たると解される。本件においても、従前の判例(昭和27年12月18日決定等)の趣旨に照らし、同条の「雇用」該当性を認めるのが相当である。
結論
淫売婦と抱主との契約関係は、職業安定法5条1項にいう「雇用」関係に該当する。したがって、同法違反の罪の成立を認めた原判決に憲法違反や判例違反はない。
実務上の射程
労働法規や行政法規における「雇用」の概念が、公序良俗に反する契約(民法90条)により私法上無効であっても、処罰の必要性や行政上の規制目的の観点から、実態を重視して肯定されるべき場面で参照されるべき判例である。
事件番号: 昭和29(あ)1298 / 裁判年月日: 昭和31年3月23日 / 結論: 棄却
職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に、使用者に対し、肉体的精神的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するのが、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(あ)第三六二六号同二九年三月一…