職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に、使用者に対し、肉体的精神的労務を供給する関係にあれば足りるものと解するのが、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二七年(あ)第三六二六号同二九年三月一一日第一小法廷判決、集八巻三号二四〇頁参照)原判決の認定判断は、右判例の趣旨に照して正当である。
職業安定法第五条にいう「雇用関係」の意義
職業安定法5条
判旨
職業安定法5条にいう「雇用関係」とは、民法上の雇用契約に限定されず、社会通念上、被用者が経済的利益を得て一定の条件の下で使用者に労務を供給する関係を広く含む。
問題の所在(論点)
1. 起訴状において他の犯罪事実と識別し得る程度に犯罪事実が特定されているか(訴因の特定)。 2. 職業安定法5条にいう「雇用関係」の意義(民法上の雇用契約に限定されるか)。
規範
職業安定法5条にいう「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法623条の意義に解すべきものではない。広く社会通念上、被用者が有形無形の経済的利益を得て、一定の条件の下に、使用者に対し、肉体的精神的労務を供給する関係にあれば足りる。
重要事実
被告人は特殊カフェーを経営しており、Aに対し、当該カフェーで働く女給の募集周旋を依頼した。被告人は、当該募集によって集まった女給との関係が請負契約であって「雇用関係」には当たらないと主張し、職業安定法違反(労働者募集の制限違反等)の成否を争った。また、起訴状において募集の態様や「周旋」の意義が不明瞭であり、訴因の特定に欠ける旨も主張された。
あてはめ
1. 訴因について:起訴状には、被告人がAをして女給となることを勧誘させて募集させた趣旨が記載されており、他の犯罪事実と識別できないほど不明瞭とはいえない。 2. 雇用関係について:被告人が経営する特殊カフェーの女給は、被告人との間に支配的従属関係が認められる。女給が経済的利益(給与等)を得て、被告人の指示等の一定条件の下で接客という労務を供給している以上、形式的な契約名目にかかわらず、社会通念上の「雇用関係」が認められる。
結論
被告人と女給との間には職業安定法上の雇用関係が認められ、適法な許可等なく募集を行った行為は同法違反となる。上告棄却。
実務上の射程
労働法規における「労働者」や「雇用」の概念を、民法の形式的定義にとらわれず、実態に即して広く解釈する際の根拠となる判例である。答案上は、実態としての指揮監督関係や経済的対価性を指摘し、本規範を用いて「雇用関係」を肯定する論法に用いる。
事件番号: 昭和27(あ)3626 / 裁判年月日: 昭和29年3月11日 / 結論: 棄却
職業安定法第五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法第六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的、精神的労務を供給する関係にあればたりるものと解するのを相当する。