一 第一審では職業安定法六三条二号を適法に適用処罰している。すなわち、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な事務に就かせる目的で、職業紹介……を行つた者」として処罰されたのである。その職業紹介が有料の職業紹介事業を行つたか(同法三二条一項本文)、無料の職業紹介事業を行つたか(同法三三条一項)は本件には関係がない。 二 第一審判決判示第一の(二)の職業安定法違反罪と第二の詐欺罪とは所論のとおり一所為数法として処断されている。これと第一の(一)の職業安定法違反罪とは別の行為であるから、併合罪として処断したことは当然であつて違法はない。
一 職業安定法第六三条第二号の法意 二 詐欺事実と一所為数法の関係にある職業安定法違反事実と、他の職業安定法違反事実とは併合罪か
職業安定法63条2号,職業安定法32条1項,職業安定法33条1項,刑法54条1項前段,刑法45条
判旨
職業安定法63条2号の「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介等を行った者」に対する処罰規定は、それ自体の中に禁止規範と罰則が含まれており、有料・無料の別を問わず適用される。
問題の所在(論点)
職業安定法63条2号(有害業務目的の職業紹介等)の適用において、当該職業紹介が有料であるか無料であるかという事業の性質を区別する必要があるか。また、同条号はそれ自体で独立した禁止規範を含んでいるといえるか。
規範
職業安定法63条2号は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介等を行う行為自体を禁止し、これに違反した者を処罰する規定である。したがって、当該行為が同法32条1項の有料職業紹介事業又は同法33条1項の無料職業紹介事業のいずれに該当するかを問わず、同号の要件を満たす限り処罰の対象となる。
重要事実
被告人は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介を行ったとして、職業安定法63条2号違反により起訴された。弁護人は、同条号の適用において、有料の職業紹介事業(32条1項)か無料の職業紹介事業(33条1項)かの区別が必要であると主張して上告した。また、18歳未満の児童を従業婦として雇い入れることの適法性や、詐欺罪との罪数関係についても争われた。
あてはめ
職業安定法63条2号は、「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」という主観的意図をもって職業紹介等を行う行為を、その反社会性に着目して禁止している。本件において、被告人は有害業務への紹介を行っており、この行為は同号が直接禁止する規範に抵触する。紹介が有料か無料かという事業形態の差異は、同号の成立を左右するものではない。また、児童福祉法が「児童に淫行をさせる行為」を禁止している以上、これに関連する業務への紹介は有害業務に該当すると判断される。第一審判決が認定した事実によれば、同法違反と詐欺罪は一所為数法の関係にあり、他の違反行為とは併合罪として処理されていることも適法である。
結論
職業安定法63条2号は独立した禁止規範と罰則を定めた規定であり、紹介の態様(有料・無料)を問わず、有害業務目的の紹介行為があれば同罪が成立する。
実務上の射程
職業安定法における禁止規定の独立性を認めた判例。答案上は、同法違反の成否を検討する際、許可の有無や事業の形態(32条、33条等)に左右されず、63条各号の目的に該当すれば足りることを示す際に引用できる。
事件番号: 昭和29(あ)1765 / 裁判年月日: 昭和30年2月10日 / 結論: 棄却
職業安定法第六三条二号は、公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で職業紹介等を行つた者又はこれらに従事した者を処罰する規定であり、昭和二七年法律八一号により法律として効力を有する昭和二二年勅令九号二条は、婦女に売淫させることを内容とする契約をした者を罰する規定である。両者は取締の目的及び違反行為の内容性質を異に…