裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴五〇二条により刑の言渡をした裁判所のすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行をすべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二八年一〇月一六日長野地裁上田支部において懲役一年(未決勾留日数中三〇日に刑期に算入)、同二九年二月二五日東京高裁において控訴棄却の各言渡をし、同年九月当裁判所においてはもとより刑の言渡をしないのであるから、執行に関する本件異議申立は刑を言渡した長野地方裁判所に対しすべきものである。されば本件異議申立は結局不適法である。
刑訴法第五〇二条という「言渡をした裁判所」
刑訴法502条
判旨
刑訴法502条にいう「刑の言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑の言渡をした裁判所を指し、上告棄却の決定をした最高裁判所はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
刑の執行に関する異議の申立て(刑訴法502条)の相手方である「刑の言渡をした裁判所」に、上告棄却の決定をした最高裁判所が含まれるか。
規範
刑事訴訟法502条に規定される「刑の言渡をした裁判所」とは、実際に執行の対象となる刑の言渡しを直接行った裁判所を指称する。
重要事実
被告事件について、第一審の長野地方裁判所上田支部が懲役1年の判決を言い渡し、第二審の東京高等裁判所が控訴棄却の判決を言い渡した。その後、最高裁判所が上告棄却の決定を行った。これに対し、裁判の執行を受ける者が刑訴法502条に基づき、最高裁判所に対して執行に関する異議の申立てを行った。
事件番号: 昭和42(す)99 / 裁判年月日: 昭和42年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条にいう「裁判の言渡しをした裁判所」とは、執行すべき刑を言い渡した裁判所を指し、上告を棄却した最高裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、欺詐被告事件について最高裁判所が上告棄却の決定をした後、最高裁判所に対し、裁判の執行に関する異議の申立てを行った。 第2 問題の…
あてはめ
本件において、具体的な刑(懲役1年)の言渡しを行ったのは第一審裁判所であり、控訴審は控訴を棄却したにとどまる。また、最高裁判所が行ったのは上告棄却の決定であり、自ら刑の言渡しを行っていない。刑訴法502条の趣旨が執行すべき刑を確定させた裁判所に管轄を認めるものである以上、刑の言渡しを一切していない最高裁判所は、同条の「刑の言渡をした裁判所」には当たらないと評価される。
結論
本件異議申立ては管轄違いであり、不適法として棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事執行手続における管轄の所在を明確にするものである。上訴審で判決が維持された場合であっても、502条の申立先は原則として「実際に刑を言い渡した裁判所」であることを示す。答案上は、執行に関する救済手続の適法性を検討する際の基礎知識として利用する。
事件番号: 昭和40(す)175 / 裁判年月日: 昭和40年7月26日 / 結論: 棄却
裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は、刑訴法502条により言渡をした裁判所にすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは、執行すべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである(昭和二六年(す)第三二五号同年九月一三日第一小法廷決定、刑集五巻一〇号一九二六頁参照)。そして、本件被告事件については、昭和三八…
事件番号: 昭和28(す)482 / 裁判年月日: 昭和28年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条にいう「言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑の言渡しをした裁判所を指し、上告棄却の決定をした裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、被告事件について裁判の執行を受ける者であったが、当該事件に関し、上告審として上告棄却の言渡しを行った最高裁判所に対して執行に関する異…
事件番号: 昭和26(す)325 / 裁判年月日: 昭和26年9月13日 / 結論: 棄却
然し、裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴第五〇二条により刑の言渡をした裁判所にすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行すべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二四年七月九日東京地裁に於て懲役六年(未決六〇日通算)の言渡をし、同二五年二月二七日東京高…
事件番号: 平成4(す)7 / 裁判年月日: 平成4年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法502条にいう「執行すべき刑の言渡しをした裁判所」に最高裁判所は含まれないため、最高裁判所に対する裁判の執行に関する異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反等の被告事件について、最高裁判所から上告棄却の決定を受けた。これに対し、被告人は裁判の執行に関する異議の申…