然し、裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴第五〇二条により刑の言渡をした裁判所にすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行すべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二四年七月九日東京地裁に於て懲役六年(未決六〇日通算)の言渡をし、同二五年二月二七日東京高裁に於て控訴棄却、同二六年八月九日当裁判所に於て上告棄却(但し当審未決三〇〇日通算)の各言渡をしたもので、当裁判所に於てはもとより刑の言渡をしないのであるから、執行に関する本件異議申立は刑を言渡した東京地方裁判所に対しすべきものである。当裁判所のした右上告棄却の決定に対する本件異議申立は結局不適法である。
刑訴法第五〇二条にいう「言渡をした裁判所」の意義
刑訴法502条
判旨
刑法訴訟法502条にいう「刑の言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑の言渡しをした裁判所を指し、上告裁判所において刑の言渡しをしていない場合には、上告裁判所に対して刑の執行に関する異議を申し立てることはできない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法502条に規定される「刑の言渡をした裁判所」の意義、および最高裁判所が上告棄却の決定に際して未決勾留日数の通算を行った場合であっても、同条の「刑の言渡をした裁判所」に該当するか。
規範
刑事訴訟法502条に基づく刑の執行に関する異議の申立て先である「刑の言渡をした裁判所」とは、現に執行すべき刑の内容(主文)を確定させた第一審裁判所等の、刑の言渡しを直接行った裁判所を指称する。上告棄却の判決や決定は、原判決の内容を維持するものであり、自ら刑の言渡しを行うものではない限り、同条の「言渡をした裁判所」には当たらない。
重要事実
申立人は、東京地方裁判所で懲役6年の言渡しを受け、東京高等裁判所で控訴棄却、最高裁判所で上告棄却の決定(未決勾留日数の通算を含む)を受けた。申立人は、刑の執行指令を受けたことに対し、上告棄却の決定に対して即時抗告中であり事件は未確定である等と主張して、最高裁判所に対し刑の執行に関する異議を申し立てた。
事件番号: 昭和42(す)99 / 裁判年月日: 昭和42年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条にいう「裁判の言渡しをした裁判所」とは、執行すべき刑を言い渡した裁判所を指し、上告を棄却した最高裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、欺詐被告事件について最高裁判所が上告棄却の決定をした後、最高裁判所に対し、裁判の執行に関する異議の申立てを行った。 第2 問題の…
あてはめ
本件において、実際に懲役6年の刑の言渡しをしたのは第一審の東京地方裁判所である。最高裁判所が行ったのは上告棄却の決定であり、未決勾留日数の通算(300日)を付してはいるものの、これは「刑の言渡し」そのものには当たらない。したがって、執行すべき刑を言い渡した裁判所は東京地方裁判所であると解されるため、最高裁判所は異議の申立先として不適当である。
結論
最高裁判所は刑の言渡しをした裁判所ではないため、本件異議申立ては不適法として棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判の執行に関する救済手続において、申立先となる管轄裁判所を特定する際の基準となる。上告審が自判して刑を言い渡した場合を除き、原則として第一審(または控訴審の自判時)の裁判所が管轄となることを明確にしている。答案作成上は、執行に関する異議の申立先を誤らないよう注意する基礎知識として機能する。
事件番号: 昭和28(す)482 / 裁判年月日: 昭和28年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条にいう「言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑の言渡しをした裁判所を指し、上告棄却の決定をした裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、被告事件について裁判の執行を受ける者であったが、当該事件に関し、上告審として上告棄却の言渡しを行った最高裁判所に対して執行に関する異…
事件番号: 昭和29(す)488 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴五〇二条により刑の言渡をした裁判所のすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行をすべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二八年一〇月一六日長野地裁上田支部において懲役一年(未決勾留日数中三〇日に刑期に算入)、同二九年…
事件番号: 平成4(す)7 / 裁判年月日: 平成4年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法502条にいう「執行すべき刑の言渡しをした裁判所」に最高裁判所は含まれないため、最高裁判所に対する裁判の執行に関する異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反等の被告事件について、最高裁判所から上告棄却の決定を受けた。これに対し、被告人は裁判の執行に関する異議の申…
事件番号: 昭和52(す)127 / 裁判年月日: 昭和52年6月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法502条に基づく裁判の執行に関する異議の申立ては、執行すべき裁判の言渡しをした裁判所に対してすべきであり、上告棄却決定をした最高裁判所はこれに当たらない。 第1 事案の概要:申立人は傷害被告事件において、最高裁判所から上告棄却決定を受け、同決定は昭和52年4月19日に確定した。その後、申立人…