判旨
刑事訴訟法502条にいう「言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑の言渡しをした裁判所を指し、上告棄却の決定をした裁判所はこれに含まれない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法502条に基づき、裁判の執行に関する異議の申立てをすべき「言渡をした裁判所」に、上告棄却の言渡しをした裁判所(最高裁判所)が含まれるか。
規範
刑事訴訟法502条の規定により、裁判の執行を受ける者が執行に関する異議の申立てを行うべき「言渡をした裁判所」とは、執行の対象となるべき刑の言渡しを実際に行った裁判所を指称すると解するのが相当である。
重要事実
申立人は、被告事件について裁判の執行を受ける者であったが、当該事件に関し、上告審として上告棄却の言渡しを行った最高裁判所に対して執行に関する異議の申立てを行った。なお、最高裁判所は上告棄却の判断を示したのみで、具体的な刑の言渡しは行っていなかった。
あてはめ
最高裁判所は、本件被告事件について上告棄却の言渡しをしたものにすぎず、執行すべき刑の言渡しそのものを行っていない。同条が定める「言渡をした裁判所」は、刑を言い渡した裁判所に限定されると解されるため、刑の言渡しをしていない最高裁判所は、異議の申立てを受けるべき適法な裁判所には当たらないといえる。
結論
本件異議申立ては不適法であり、棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事手続における執行に関する異議申立ての管轄を確定させる際の基準として機能する。第一審判決が維持されて上告棄却となった場合、異議申立ての相手方は上告審ではなく、実際に刑を言い渡した下級審(通常は第一審または控訴審)となる点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和29(す)488 / 裁判年月日: 昭和29年12月24日 / 結論: 棄却
裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴五〇二条により刑の言渡をした裁判所のすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行をすべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二八年一〇月一六日長野地裁上田支部において懲役一年(未決勾留日数中三〇日に刑期に算入)、同二九年…
事件番号: 昭和42(す)99 / 裁判年月日: 昭和42年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条にいう「裁判の言渡しをした裁判所」とは、執行すべき刑を言い渡した裁判所を指し、上告を棄却した最高裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、欺詐被告事件について最高裁判所が上告棄却の決定をした後、最高裁判所に対し、裁判の執行に関する異議の申立てを行った。 第2 問題の…
事件番号: 昭和26(す)325 / 裁判年月日: 昭和26年9月13日 / 結論: 棄却
然し、裁判の執行を受ける者の執行に関する異議の申立は刑訴第五〇二条により刑の言渡をした裁判所にすべきところ、右にいわゆる言渡をした裁判所とは執行すべき刑の言渡をした裁判所を指称すること明らかである。そして本件被告事件については昭和二四年七月九日東京地裁に於て懲役六年(未決六〇日通算)の言渡をし、同二五年二月二七日東京高…
事件番号: 昭和57(す)168 / 裁判年月日: 昭和57年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法502条に規定される「刑の言渡をした裁判所」とは、執行すべき刑を実質的に決定した裁判所を指し、上告を棄却しただけの最高裁判所はこれに含まれない。 第1 事案の概要:申立人は、道路交通法違反等の被告事件について最高裁判所が上告棄却の決定をした後、当該裁判の執行に関して異議の申立て(刑訴法5…
事件番号: 平成4(す)7 / 裁判年月日: 平成4年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法502条にいう「執行すべき刑の言渡しをした裁判所」に最高裁判所は含まれないため、最高裁判所に対する裁判の執行に関する異議の申立ては不適法である。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反等の被告事件について、最高裁判所から上告棄却の決定を受けた。これに対し、被告人は裁判の執行に関する異議の申…