判旨
少年法35条に基づく最高裁判所への特別抗告において、憲法違反を主張していてもその実質が家庭裁判所の認定した事実の誤認を主張するものである場合には、適法な抗告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
少年法35条1項の特別抗告において、実質的に事実誤認を主張する申立てが適法な抗告理由として認められるか。
規範
少年法35条1項は、家庭裁判所の決定に対する特別抗告の理由を、憲法の違反があること、または憲法の解釈に誤りがあることに限定している。したがって、憲法違反を形式的に主張していても、その実質が単なる事実誤認の主張にすぎない場合は、同条に規定する適法な抗告理由を構成しない。
重要事実
少年Aの付添人Bは、福岡家庭裁判所がなした少年院送致の保護処分決定を相当と認めた原決定(抗告棄却決定)に対し、憲法違反を理由として最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の実質的な内容は、少年院送致の判断資料となった少年の家庭環境等に関する事実認定に誤りがあるというものであった。
あてはめ
本件抗告人は、表面上は憲法違反を主張しているものの、その具体的指摘は家庭裁判所が認定した「家庭の事情に関する事実」の誤りに終始している。これは、同条が限定的に列挙する「憲法違反」や「憲法解釈の誤り」という法的瑕疵を突くものではなく、事実認定の当否を争うものであるといえる。したがって、抗告趣意の実質は事実誤認の主張であり、特別抗告の法的要件を満たさないと解される。
結論
本件抗告は少年法35条の特別抗告理由に当たらないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
特別抗告が憲法問題に限定されていることを確認する基本的判例である。少年事件に限らず、民事・刑事の特別抗告一般においても、事実誤認を憲法違反に擬装して主張することは許されないという実務上の鉄則を示す際に参照される。答案上は、不服申立権の範囲を論じる文脈で、憲法違反の「実質」を検討すべき根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(し)39 / 裁判年月日: 昭和30年9月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告は、少年法35条に規定する憲法違反または憲法解釈の誤りがある場合に限り認められる。本件では、抗告理由がこれら法定の事由に該当しないことが明らかであるため、抗告は理由がないとして棄却される。 第1 事案の概要:抗告人は、家庭裁判所の決定等に対して最高裁判所へ特別抗告を申し立…
事件番号: 昭和28(し)82 / 裁判年月日: 昭和28年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項に基づく再抗告は、同項に規定された事由がある場合に限り許容される。憲法違反を主張していても、実質的に原決定の不当(訴訟法違反)をいうにすぎない場合は、適法な再抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:申立人Aは、家庭裁判所の決定に対する抗告審の判断を不服として再抗告を申し立てた。…
事件番号: 昭和54(し)68 / 裁判年月日: 昭和54年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項の再抗告理由において、事実誤認、単なる法令違反、および処分不当の主張は、いずれも適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人は、少年法に基づく決定に対して最高裁判所へ抗告(再抗告)を申し立てた。その際、申立ての理由として、原決定における事実の誤認、単なる法令違反、および…
事件番号: 昭和59(し)131 / 裁判年月日: 昭和60年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項に基づく抗告理由において、憲法違反を主張していても、その実質が単なる法令違反や事実誤認の主張にすぎない場合には、適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:抗告人(少年側)は、原決定に対し、憲法32条、14条、31条、13条に違反する旨を主張して抗告を申し立てた。しかし、その…
事件番号: 昭和26(し)78 / 裁判年月日: 昭和26年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年法35条1項の再抗告は、同条に規定された憲法違反または憲法解釈の誤り等の事由を理由とする場合に限り許容され、単なる事実誤認や処分の不当を主張するものは不適法である。 第1 事案の概要:申立人は窃盗等の非行事実により中等少年院送致の保護処分を受けた。これに対し申立人は、(1)家からの持ち出し窃盗…