有罪判決において刑の執行猶予を言渡すに当り、保護観察に付すことを得ない場合であるにかかわらず、併せて保護観察に付する旨言渡したときは、刑訴法第四五八条第一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」に当る。
刑訴法第四五八条第一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」に当る一事例
刑訴法458条,刑法25条ノ2(いずれも昭和29年法律57号による改正規定),刑法26条ノ2(いずれも昭和29年法律57号による改正規定),昭和29年法律57号刑法一部改正法律附則2項,執行猶予者保護観察法5条
判旨
昭和29年の刑法改正により導入された保護観察は、改正法の施行日(同年7月1日)以前に犯された罪については、改正法附則の規定に基づき適用することができない。
問題の所在(論点)
刑法改正による保護観察制度の導入に際し、改正法施行前に行われた犯罪行為に対して、遡及的に保護観察を付すことができるか。また、法令に違反して付された保護観察の言渡しは「被告人のために不利益」(刑訴法458条1号但書)にあたるか。
規範
刑法25条の2第1項前段に規定される保護観察の付与は、昭和29年法律57号附則2項により、同法施行日である昭和29年7月1日より前に犯された罪については適用されない。
重要事実
被告人は、昭和29年6月8日頃に賍物寄蔵、同月11日頃に横領を行った。一審判決は、これらの犯罪事実に対し懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1,000円を言い渡したが、併せて刑法25条の2第1項前段を適用し、執行猶予期間中に保護観察に付する旨の判決を下し、確定した。
事件番号: 昭和29(さ)5 / 裁判年月日: 昭和29年12月3日 / 結論: 破棄自判
有罪判決において刑の執行猶予を言渡すに当り、保護観察に付することを得ない場合であるにかかわらず、併せて保護観察に付する旨言渡したときは、刑訴第四五八条第一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」に当る。
あてはめ
本件各犯行は昭和29年6月に発生しており、改正法施行日の同年7月1日以前の行為である。改正法附則2項は、施行前の罪への適用を明示的に否定しているため、原判決の法令適用には誤りがある。また、保護観察を付されることは、遵守事項違反による執行猶予取消しのリスク(刑法26条の2第2号)を負うことを意味するため、被告人にとって不利益な処分に該当するといえる。
結論
原判決中、保護観察に付する部分は法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄される。被告人を改めて懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1,000円に処し、保護観察は付さない。
実務上の射程
新設された制度や刑罰の遡及適用を禁止する刑法の基本原則(罪刑法定主義)を確認する事例。実務上、非常上告において「被告人の不利益」を判断する際、遵守事項の発生を伴う保護観察の付与が不利益に含まれることを示す指標となる。
事件番号: 昭和29(さ)4 / 裁判年月日: 昭和29年11月25日 / 結論: 破棄自判
昭和二九年法律五九号の附則二項は、同法施行前の犯罪については、同法施行後の犯罪と併合罪に当らない限り、右刑法二五条ノ二、一項前段の改正規定の適用がない旨を規定しているから、右法律五七号施行前のみの犯罪にかかる本件被告事件につき刑の執行猶予を言い渡す場合において、被告人を保護観察に対することを得ないものであることもまた明…
事件番号: 昭和30(さ)1 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法律の附則により適用が除外されている改正刑法の保護観察規定を誤って適用した判決は、法令違反であり、かつ被告人に遵守義務等の負担を課す点で「被告人のため不利益」な裁判に該当する。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、昭和29年4月から6月にかけて共謀の上、詐欺罪を犯した。原審は、昭和29年7月1日に…
事件番号: 昭和28(さ)4 / 裁判年月日: 昭和28年12月18日 / 結論: その他
同一事件につき後に公訴を受けた裁判所の裁判が最初に公訴を受けた裁判所の裁判より先きに確定したときは、後に確定した裁判は非常上告により破棄免訴を免かれない。