判旨
法律の改正により新設された保護観察付執行猶予の規定は、附則による明示的な適用除外がある場合、施行前の犯罪(施行後の犯罪との併合罪でないもの)に対しては適用できない。
問題の所在(論点)
法律改正により新たに導入された制度(保護観察付執行猶予)について、その施行前の犯罪に対して適用することができるか。また、附則の経過措置に反して新法を適用した判決の是非が問題となる。
規範
刑法等の改正に際し、附則において「施行前の犯罪については、施行後の犯罪と併合罪の関係に立たない限り、改正後の規定を適用しない」旨の経過措置が定められている場合、当該施行前のみの犯罪に対しては改正後の規定(保護観察の付与等)を適用することはできない。
重要事実
被告人は昭和24年9月に詐欺および遺失物横領の犯行に及んだ。その後、昭和29年の刑法改正により、刑の執行猶予の際に保護観察に付することができる旨の規定(刑法25条の2第1項前段)が新設されたが、同改正法の附則2項には「施行前の犯罪については、施行後の犯罪と併合罪の関係に立たない限り適用しない」との経過措置があった。原判決は、施行前の犯罪のみである本件に対し、改正後の規定に基づき保護観察を言い渡した。
あてはめ
本件の犯罪事実は昭和24年になされたものであり、昭和29年法律第57号の施行前である。また、施行後の犯罪との併合罪という関係も認められない。同法附則2項は、このような場合には刑法25条の2第1項前段の適用を明示的に否定している。それにもかかわらず、原判決が同条を適用して被告人を保護観察に付したことは、法律の附則に直接違反するものであり、判決に影響を及ぼすべき法令違反に該当する。
結論
原判決を破棄する。附則の定めに従い、施行前のみの犯罪に対して保護観察を付することはできず、通常の執行猶予のみを言い渡すべきである。
事件番号: 昭和29(さ)5 / 裁判年月日: 昭和29年12月3日 / 結論: 破棄自判
有罪判決において刑の執行猶予を言渡すに当り、保護観察に付することを得ない場合であるにかかわらず、併せて保護観察に付する旨言渡したときは、刑訴第四五八条第一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」に当る。
実務上の射程
法令の改廃に伴う経過措置(附則)の重要性を説く事案。実務上、刑法改正時の「遡及適用」の制限や、有利な規定の適用(刑法6条)と経過措置の関係を整理する際の基礎知識として機能する。
事件番号: 昭和29(さ)6 / 裁判年月日: 昭和29年12月14日 / 結論: 破棄自判
有罪判決において刑の執行猶予を言渡すに当り、保護観察に付すことを得ない場合であるにかかわらず、併せて保護観察に付する旨言渡したときは、刑訴法第四五八条第一号但書にいう「原判決が被告人のため不利益であるとき」に当る。
事件番号: 昭和30(さ)1 / 裁判年月日: 昭和30年4月22日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】法律の附則により適用が除外されている改正刑法の保護観察規定を誤って適用した判決は、法令違反であり、かつ被告人に遵守義務等の負担を課す点で「被告人のため不利益」な裁判に該当する。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、昭和29年4月から6月にかけて共謀の上、詐欺罪を犯した。原審は、昭和29年7月1日に…