主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪とした処断した原判決は、同一性質の事件につき訴因を不当高価販売罪として起訴され、判決においても物価統制令違反罪(不当高価販売)の成立を認めた高裁判例に違反するということはできない。
主訴因を詐欺罪、予備的訴因を物価統制令違反罪(不当高価販売)とした起訴事実を詐欺罪として判断した判決は同一性質の所為を物価統制令違反罪(不当高価販売)として処断した判例に反するか
刑法246条,物価統制令9条ノ2,刑訴法405条3号,刑訴法256条3項
判旨
適法な競売り(オークション)を装った行為であっても、その実態において欺罔行為が認められ、詐欺罪の構成要件を充足する場合には、同罪が成立する。
問題の所在(論点)
適法な売買形式を装った行為について詐欺罪が成立するか。また、同様の行為が他事件で物価統制令違反として処罰されている場合に、本件を詐欺罪として処断することが判例違反や憲法違反(職業選択の自由)を構成するか。
規範
特定の売買方法が民法上認められた形式(競売り等)を採っていたとしても、客観的に相手方を欺いて財物を交付させる「欺罔行為」が認められ、かつ主観的に詐欺の「犯意」が認められる場合には、刑法246条1項の詐欺罪が成立する。また、同一の行為態様であっても、検察官が構成した訴因および立証の内容に基づき、裁判所が詐欺罪の成立を認定することは適法である。
重要事実
被告人等は、競売り(オークション)の形式による売買を職業としていた。検察官は、被告人等の行為を、第一に詐欺罪、予備的に物価統制令違反罪として起訴した。被告人側は、本件行為は民法上認められた適法な競売りであり、詐欺の犯意も欺罔行為も存在しないため、詐欺罪による処罰は憲法22条の職業選択の自由にも反すると主張して争った。
あてはめ
被告人等の行為は、形式的には競売りという民法上の売買方法を採っているものの、その実態は相手方を欺いて財物を交付させる詐欺罪の構成要件を充足するものと認められる。記録に基づけば、被告人らには詐欺の犯意および欺罔行為が認められ、本件は単なる適法な経済活動の範囲を逸脱している。したがって、職業選択の自由(憲法22条)の保障を理由として免責されるものではない。また、訴因に応じた裁判所の認定判断として、詐欺罪の証明が十分である以上、他事件との罪名の差異は判例違反には当たらない。
結論
被告人等の行為について詐欺罪の成立を認めた原判決は正当である。適法な売買方法を装っても、詐欺の構成要件を充足する以上、詐欺罪として処罰される。
実務上の射程
形式上は民事上の適法な契約形態を装っている商行為であっても、実態として欺罔的要素が強い場合には、詐欺罪の成立が肯定されることを示す。罪数や訴因選択において、特別法(物価統制令等)違反か一般刑法の詐欺罪かは、検察官の立証と訴因に依拠するという実務上の運用の指針にもなる。
事件番号: 昭和28(あ)5252 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪と恐喝罪は排斥関係にあるわけではなく、相手方を畏怖させた場合であっても、欺罔行為によって錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて財物を交付させたといえる場合には詐欺罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が行った特定の行為(第一審判決別表十四の事実)について、弁護人は、当該行為が相手方を畏怖させて財…