一 原審が、その認定した被告人らの本件所為をもつて、一般の誇大広告宣伝の類とは趣きを異にし、正当な業務による行為の範囲に属するものとは認め難く、刑法上詐欺罪を構成すべきこと当然であると判断したことは正当である。 二 (原審認定事実)被告人等は市街の一隅に売場を設け通りがかりの一般人に繊維製品類を売りつけるに当りいわゆる「真打ち」「脇役」「さくら」の部署を定めてそれぞれこれを担当し、広告宣伝を行い、一般人の容易に看破することの出来ない詐術を施用し客をして商品の品質並びに売買値段の決定方法に関する判断を誤らせその錯誤に基いて申し出た値段で買受けるのやむなきに至らしめたもの
いわゆる「たたき売り」として「さくら」等を使い商品を販売する行為と正当な業務行為―詐欺罪の成否―
刑法35条,刑法246条
判旨
社会通念上許容される誇大広告の範囲を超え、正当な業務による行為と認められない程度の虚偽宣伝は、刑法246条1項の欺罔行為に該当し、詐欺罪を構成する。
問題の所在(論点)
商品の販売に際して行われる誇大な広告宣伝が、刑法246条1項の「人を欺く行為(欺罔行為)」として詐欺罪を構成するための境界線が問題となる。
規範
取引における宣伝広告が詐欺罪の欺罔行為に該当するか否かは、それが一般の誇大広告宣伝の類にとどまるか、あるいはそれを超えて正当な業務による行為の範囲を逸脱し、社会通念上許容されない程度に至っているかによって判断すべきである。
重要事実
被告人らは、商品販売に際して宣伝・広告を行ったが、その内容は単なる誇大な表現にとどまらず、客観的事実を著しく歪めたものであった。具体的にどのような虚偽事実を告知したか、また被害額等の詳細は本判決文からは不明であるが、原審はこれが一般の誇大広告とは一線を画するものであると認定した。
あてはめ
本件における被告人らの行為は、単なる誇大広告の類とは趣を異にするものである。このような行為は、取引において許容される「正当な業務による行為」の範囲に属するものとは認め難い。したがって、相手方を錯誤に陥らせて財物を交付させる欺罔行為としての違法性を有すると評価される。
結論
被告人らの行為は詐欺罪を構成する。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、広告宣伝と詐欺罪の境界を「正当な業務の範囲」という基準で示したものである。答案上では、商慣習上許容される「誇大広告」と、重要事項について真実を告げない「欺罔」を区別する際のメルクマールとして利用できる。
事件番号: 昭和28(あ)5252 / 裁判年月日: 昭和30年11月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐欺罪と恐喝罪は排斥関係にあるわけではなく、相手方を畏怖させた場合であっても、欺罔行為によって錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて財物を交付させたといえる場合には詐欺罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人が行った特定の行為(第一審判決別表十四の事実)について、弁護人は、当該行為が相手方を畏怖させて財…