判旨
統制法(経済統制に関する法令)に違反する態様での取引であっても、人を欺いて財物を交付させた場合には、刑法246条1項の詐欺罪が成立する。
問題の所在(論点)
統制法違反の状況下で行われた不法な取引において、人を欺いて財物を取得した行為について、刑法246条1項の詐欺罪が成立するか。
規範
経済統制法規に違反する違法な取引過程で行われた行為であっても、欺罔行為によって相手方を錯誤に陥らせ、それに基づき財物の交付を受けたのであれば、刑法246条1項の詐欺罪の構成要件を充足する。
重要事実
被告人は、当時の物資統制に関連する法規(統制法)に違反する状況下で取引を行った。その際、何らかの欺罔行為を用いて相手方から財物を取得したとして詐欺罪(刑法246条1項)等に問われた。弁護側は、本件のような統制法違反の事案に詐欺罪を適用することは不当であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は詳細な事実関係の個別判断を示すまでもなく、これまでの判例(しばしば示されている判例)を引用する形で、本件のような統制法違反の事案であっても詐欺罪の成立を認めるのが正当であるとした。不法な取引の枠組みの中であっても、個別の財産的価値の移動について欺罔・錯誤・交付・財産の移転という詐欺罪の要件を満たす以上、同罪の成立は妨げられないと解される。
結論
本件のような統制法違反の事案を詐欺罪として処断することは正当であり、刑法246条1項が適用される。
実務上の射程
不法原因給付が関わる事案であっても、詐欺罪の成立を認めるという判例理論の系譜に位置づけられる。実務上は、取引自体が公序良俗に反したり行政規制に違反したりする場合であっても、欺罔による財産移転があれば詐欺罪の成立を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)420 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】食糧緊急措置令の規制対象となる配給行為に関連する欺罔行為であっても、刑法246条1項の詐欺罪の構成要件を充足する場合には、同令ではなく詐欺罪が成立する。 第1 事案の概要:被告人は、食糧の配給に関連して「配給所販売原簿」に不実の記載をする等の手段を用いた可能性があるが、具体的な欺罔行為の内容や交付…