判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに当然に失効するか、または憲法21号に違反して失効したものと解される。したがって、条約発効後の当該政令違反の審判においては、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴とすべきである。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により失効したポツダム宣言受諾に伴う政令の違反行為について、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し免訴とされるべきか。
規範
特定の目的(占領目的の遂行等)を達するために制定された罰則規定が、その前提となる事態の終了(平和条約の発効)によって効力を失った場合、または新たな法体系(日本国憲法)の下で許容されない内容を含むこととなった場合には、実質的に処罰の根拠が失われる。この場合、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、当該行為に対する刑罰権は消滅する。
重要事実
被告人は、昭和25年政令325号(占領目的阻害行為処罰令)に違反する行為および建造物侵入の罪に問われた。しかし、当該政令の根拠となっていた連合国軍による占領状態は、平和条約の発効によって終了した。これに伴い、連合国に対する「虚偽又は破壊的批評」等を禁止していた同政令の規定について、平和条約発効後もなお処罰を継続できるかが争点となった。
あてはめ
本件政令325号は、占領目的を達成するための特殊な法域において認められたものであり、平和条約の発効と同時に当然に失効した、あるいは、表現の自由を保障する憲法21号の趣旨に照らし、条約発効後の日本法体系においてその効力を維持することは許されない。このように、法的な価値判断の変化により刑罰規定が廃止された以上、被告人の行為時に処罰規定が存在したとしても、裁判時においては刑の廃止があったものと解するのが相当である。
結論
本件政令違反の点は「犯罪後に刑が廃止されたとき」にあたるため免訴とした原判決は正当であり、検察官の上告は棄却される。
事件番号: 昭和27(あ)4637 / 裁判年月日: 昭和30年12月21日 / 結論: 棄却
原判決が高裁の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、上告申立後先例たる高等裁判所の判例が最高裁判所の判決により変更されたときは、最高裁判所はその上告を棄却すべきものである。
実務上の射程
刑事訴訟法における「刑の廃止」の意義を、単なる形式的な廃止だけでなく、憲法適合性や前提事態の消滅による実質的な失効を含むものとして解釈する際の根拠となる。限時法の失効後の処罰の可否に関する議論においても、実質的な法価値の変更が認められる場合には本判決の法理が妥当し得る。
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和27(あ)6091 / 裁判年月日: 昭和30年11月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効と同時にその効力を失うため、発効前の違反行為を処罰することは刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、連合国最高司令官による「言論及び新聞の自由」と題する覚書に基づき、「公式に発表せられざる…
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…