判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により、占領軍の指令に基づき制定された処罰規定が失効した場合、当該行為は刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴となるか。
規範
特定の占領下法令について、平和条約の発効によって当然に失効するか、あるいはその内容が日本国憲法の保障する基本的人権(表現の自由等)に抵触することとなる場合、当該法令は効力を維持し得ない。このように、法令がその根拠を失い、または憲法違反の結果として適用を拒絶されるに至った場合には、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するものと解すべきである。
重要事実
被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7月18日付の連合国最高司令官(GHQ)の指令に基づく「占領目的阻害行為処罰令(政令325号)」に違反する行為を行ったとして起訴された。しかし、その後の平和条約発効(日本の主権回復)により、占領軍の指令に基づく当該政令の法的根拠や効力が争われることとなった。
あてはめ
本件政令は、占領目的を達成するための臨時的な性格を有するものであり、平和条約の発効によりその前提となる占領権力が消滅した以上、当然に失効したと解される。また、当該政令が根拠としたGHQの指令内容は、日本国憲法21条が保障する言論・表現の自由を不当に制限するものであり、主権回復後の日本においてこれを適用することは憲法の趣旨に反する。このように、法令が実質的な効力を失い、処罰の根拠が失われた以上、刑法の一般的原理として「刑が廃止された」ものと同視すべきである。
結論
本件は犯罪後の法令により刑が廃止されたときに当たるため、刑事訴訟法337条2号に基づき、免訴の判決を言い渡すべきである。
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…
実務上の射程
本判決は、限時法の失効が「刑の廃止」に当たるかという論点において、単なる事実関係の変更(事実の変遷)ではなく、法令の法的評価・根拠そのものが失われた場合には免訴を認めるという法理を示している。司法試験では刑法6条(刑の変更)や刑訴法337条2号の適用場面において、法令失効の理由(憲法適合性や根拠消滅)を精査する際の指標となる。
事件番号: 昭和27(あ)6091 / 裁判年月日: 昭和30年11月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効と同時にその効力を失うため、発効前の違反行為を処罰することは刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、連合国最高司令官による「言論及び新聞の自由」と題する覚書に基づき、「公式に発表せられざる…
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和29(あ)2122 / 裁判年月日: 昭和31年1月25日 / 結論: その他
一 犯罪後の法令により刑の廃止があつたとして免訴を言渡した第一審判決に対し、検察官及び被告人の控訴をに基き、第二審判決が右刑の廃止なしとした上無罪の言渡しをした事件において、上告裁判所が右刑の廃止ありとするときは、第二審判決を破棄し免訴の言渡をなすべきである。 二 平和条約発効前に犯した昭和二五年政令第三二五号違反の罪…
事件番号: 昭和26(あ)3811 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に違反する連合国最高司令官の指令を適用する限りにおいて失効したと解されるため、同条約発効後の処罰は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は…