一 犯罪後の法令により刑の廃止があつたとして免訴を言渡した第一審判決に対し、検察官及び被告人の控訴をに基き、第二審判決が右刑の廃止なしとした上無罪の言渡しをした事件において、上告裁判所が右刑の廃止ありとするときは、第二審判決を破棄し免訴の言渡をなすべきである。 二 平和条約発効前に犯した昭和二五年政令第三二五号違反の罪に対する刑罰は平和条約発効後といえども、廃止されたものといえない。 三 本件上告審では、本件が有罪であるか無罪であるかを決定するのが先決問題であつて、無罪であるならば、実体裁判である免訴判決をなすべきではなく、無罪を言渡さなければならない。しかるに、多数説が、訴訟経過を精査することなく、且つ、判断を示すことなく、漫然原判決を違法であるとしてこれを破棄し被告人を免訴するのには賛同できない。
刑の廃止を理由に免訴を言渡した第一審判決に対し、控訴判決が無罪を言渡した事件において、上告審が刑の廃止ありとしたときの上告審の措置
刑訴法337条2号,刑訴法336条,裁判所法11条
判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当する。したがって、同政令違反の罪については、刑事訴訟法337条2号に基づき免訴を言い渡すべきである。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により占領目的阻害行為処罰令の効力が喪失した場合、同政令違反の罪で起訴された被告人に対し、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」として免訴を言い渡すべきか、あるいは無罪の判断が可能かが問題となる。
規範
ポツダム宣言の受諾に伴い発せられた連合国最高司令官の要請等に基づく命令は、平和条約の発効によりその法的根拠を失う。これにより、当該命令によって規定されていた刑罰規定が実効性を失う場合には、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、実体的な有罪判決をなし得ない状態(免訴)となる。
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
重要事実
被告人は、昭和25年政令325号(占領目的阻害行為処罰令)に違反する行為(連合国に対する虚偽又は破壊的批評を論議すること)を行ったとして起訴された。第一審は免訴の判決を言い渡したが、原審(二審)は事実誤認を理由にこれを破棄し、被告人に無罪を言い渡した。これに対し、検察官が上告を受理するよう申し立てた事案である。
あてはめ
昭和25年政令325号は、平和条約の発効(独立の回復)と同時に当然に失効したものと解される。また、同政令の一部(言論・新聞の自由に関する覚書に基づく部分)については、憲法21条の表現の自由にも抵触し、平和条約発効後の日本法秩序においては維持し得ない。このように法令の改廃により刑罰権が消滅した事態は、刑事訴訟法337条2号の免訴事由に直結する。したがって、免訴を言い渡さずに無罪判決を維持した原判決は、刑事訴訟法の解釈を誤った違法がある。
結論
原判決を破棄し、被告人を免訴する。犯罪後の法令により刑が廃止されたときに該当するため、実体判断(無罪判決)に先行して免訴を言い渡すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「免訴」事由がある場合、裁判所は実体的な無罪判決を出すことができず、形式裁判である免訴を言い渡さなければならないという優先順位を示す射程を持つ。また、占領法規から国内法への移行期における「刑の廃止」の代表例として、法律の遡及的失効の局面で引用される。
事件番号: 昭和27(あ)6091 / 裁判年月日: 昭和30年11月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令は、平和条約の発効と同時にその効力を失うため、発効前の違反行為を処罰することは刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、連合国最高司令官による「言論及び新聞の自由」と題する覚書に基づき、「公式に発表せられざる…
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…
事件番号: 昭和27(あ)1708 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づく表現規制は、平和条約の発効により失効し、憲法21条に違反する状態となったため、刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人らは、連合国最高司令官の指令に基づき「アカハタ」及びその類縁紙の発…