原判決が高裁の判例と相反する判断をし、これを理由として上告された場合に、上告申立後先例たる高等裁判所の判例が最高裁判所の判決により変更されたときは、最高裁判所はその上告を棄却すべきものである。
高等裁判所の判例と相反する判断をした原判決に対する上告と、上告申立後最高裁判所によりその判例が変更された場合の措置
刑訴法405条3号,刑訴法410条2項,刑訴法414条,刑訴法396条
判旨
占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により失効したと解されるため、発効前の違反行為であっても、刑事訴訟法405条の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴すべきである。
問題の所在(論点)
平和条約の発効により、占領下のポツダム宣言に基づく政令が効力を失った場合、刑事訴訟法405条(上告理由)ないし337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当するか。
規範
日本国との平和条約の発効によって占領体制が終了した場合、占領軍の指令に基づく暫定的な処罰法規は、特段の維持規定がない限りその根拠を失い当然に失効する。このように処罰の根拠となる法令が失効した場合は、刑事訴訟法上の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、被告人に対しては免訴を言い渡すべきである。
重要事実
被告人らは、占領下において制定された「占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)」に違反する行為(具体的な行為態様は判決文からは不明)を行ったとして起訴された。その後、昭和27年に日本国との平和条約が発効し、日本が主権を回復したことに伴い、当該政令の効力が争点となった。原審は、条約発効により刑が廃止されたものとして免訴を言い渡したため、検察官が上告したものである。
事件番号: 昭和29(あ)650 / 裁判年月日: 昭和30年10月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに当然に失効するか、または憲法21号に違反して失効したものと解される。したがって、条約発効後の当該政令違反の審判においては、刑事訴訟法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴とすべきである。 第1 …
あてはめ
昭和25年政令325号は、連合国最高司令官の指令を執行するために制定された占領目的の特別法令である。しかし、平和条約の発効により占領体制が終結し、日本が主権を回復した以上、占領目的の維持を前提とする同政令は当然にその効力を失うと解される。また、一部の指令(言論・新聞の自由に関する制限等)は憲法21条に抵触する側面もあり、平和条約発効後もこれを維持することは憲法の趣旨に反する。したがって、同政令違反の罪は、実質的な処罰根拠を喪失したものであり、法令の改廃により刑が廃止された場合と同視すべきである。
結論
本件政令違反の点は犯罪後に刑が廃止されたときに該当するため、免訴を言い渡した原判決は正当であり、検察官の上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、占領法規の失効という特殊な事態を扱っているが、実務上は「犯罪後の法令により刑が廃止された場合」の免訴手続を確認する意義がある。また、免訴判決を受けた被告人が、無罪を求めて上告することは許されないという点(上告の利益の不在)についても、実務上の重要な指針を示している。
事件番号: 昭和28(あ)2092 / 裁判年月日: 昭和30年7月20日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効とともに失効した。これにより、同令違反の行為は、刑事訴訟法337条2号にいう「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人は、占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)に基づき、…
事件番号: 昭和27(あ)77 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、これに違反した行為を処罰することは憲法上許されない。したがって、同政令違反の罪は犯罪後の法令により刑が廃止された場合に該当し、免訴の対象となる。 第1 事案の概要:被告人等は、昭和25年6月26日及び同年7…
事件番号: 昭和28(あ)1768 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令第325号)は、平和条約の発効と同時にその効力を失い、同条約発効後の時点においては刑法上の「犯罪後の法令により刑が廃止された」場合に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、ポツダム宣言の受諾に伴い発せられる命令に関する件に基づく「占領目的阻害行為処罰令」(昭和…
事件番号: 昭和26(あ)3811 / 裁判年月日: 昭和29年4月14日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】占領目的阻害行為処罰令(昭和25年政令325号)は、平和条約の発効により当然に失効し、又は憲法21条に違反する連合国最高司令官の指令を適用する限りにおいて失効したと解されるため、同条約発効後の処罰は刑訴法337条2号の「犯罪後の法令により刑が廃止されたとき」に該当する。 第1 事案の概要:被告人は…