判旨
没収の根拠法条の適用に誤りがある場合でも、当該物件が他の法条に基づき適法に没収し得るものであれば、直ちに判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
判決において没収の根拠法条を誤って適用した場合、あるいは法令適用の記載に精密さを欠く瑕疵がある場合に、刑事訴訟法411条の破棄事由となるか。
規範
没収の根拠となる法令の適用を誤ったとしても、対象物件が刑法19条等の規定により客観的に没収可能な要件を満たしており、結論において没収が可能であるならば、その瑕疵は刑事訴訟法411条に基づく破棄事由(判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反)には当たらない。
重要事実
被告人は銃砲刀剣類等所持取締令違反等の罪に問われ、原審は証拠物件である短刀一振を同令30条に基づき没収した。しかし、当該短刀は同令違反罪の組成物件であり、かつ被告人以外の者に属しないことが記録上明らかであった。弁護人は、没収の根拠規定の適用誤り及び理由不備等を理由に上告した。
あてはめ
原判決が短刀の没収に際し取締令30条を適用したのは誤りであるが、当該短刀は犯罪組成物件であり被告人以外の者に属さないため、刑法19条1項1号・2項により適法に没収し得るものである。したがって、適条の誤りはあっても結論において没収し得る以上、判決を破棄すべき事由とは認められない。また、刑法の条文の項の区別や適用順序に瑕疵がある点についても、主文の判断の根拠が判明し得る程度に示されていれば、同様に破棄事由には当たらない。
結論
上告棄却。適条の誤り等の瑕疵はあるが、実質的に没収の要件を満たしており判決の結果に影響しないため、原判決は維持される。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(あ)2371 / 裁判年月日: 昭和30年2月1日 / 結論: 棄却
論旨は、第一審判決が銃砲等所持禁止令一条及び二条をのみ適用し、同令施行規則一条一号の規定の適用を遺脱したのを是認した原判決は、引用の当裁判所判例に違反するというに帰するが、原判決は所論のように第一審判決が前記施行規則一条一号の規定の適用を遺脱したことを認めたものではない。原判決は第一審裁判所が認定事実に前記施行規則一条…
裁判所が適用法条を誤示した場合の救済の限界を示す。実務上は、形式的な適条の誤りがあっても、実体法上の没収要件(組成物件・所有者関係等)を満たしている限り、著しい法令違反として破棄されることはないという判断枠組みとして機能する。
事件番号: 昭和26(あ)2321 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: 棄却
記録を調べると原判決書の記載には所論のような違法があることはこれを認めざるを得ないのであるが、ただ未だ以て刑訴四一一条を適用すべきものとは云い得ないのである。(註)「第一審が無罪とした判示第四事実について破棄自判して有罪と認めるに当り証拠説明を遺脱したもの」
事件番号: 昭和26(れ)1527 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の管轄が法令に基づき適切に指定されている場合、および起訴された公訴事実の範囲内に特定の所持行為が包含されていることが明白である場合、管轄違いや訴因外の認定といった訴訟法違反の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人が日本刀を所持していた等の事実について、仙台地方裁判所が本件の管轄裁判所…
事件番号: 昭和43(あ)41 / 裁判年月日: 昭和43年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼす法令の違反がある場合であっても、被告人の情状や事案の内容に照らし、宣告刑が不当に重いといえないときには、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。 第1 事案の概要:第一審判決は、被告人が日本刀2振を不法に所持した事実を認定しながら、本来適用すべき銃刀法31条…
事件番号: 昭和26(れ)630 / 裁判年月日: 昭和26年6月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告趣意が事実誤認または量刑不当の主張、あるいは原審の認定しない事実に基づいた批判にすぎない場合には、上告の適法な理由にならないことを示したものである。 第1 事案の概要:被告人側が原判決に対して上告を申し立てたが、その上告趣意の内容は、原審の事実認定に誤りがあるとする主張や、量刑が不当で…