論旨は、第一審判決が銃砲等所持禁止令一条及び二条をのみ適用し、同令施行規則一条一号の規定の適用を遺脱したのを是認した原判決は、引用の当裁判所判例に違反するというに帰するが、原判決は所論のように第一審判決が前記施行規則一条一号の規定の適用を遺脱したことを認めたものではない。原判決は第一審裁判所が認定事実に前記施行規則一条一号を照合適用した上その趣旨に即して被告人に対し有罪の判決をなしたものと判断したのであつて、この点に関する原判決の説示は正当である。それゆえ、論旨は前提を欠き理由がないのみならず、原裁判所は論旨引用の当裁判所の判例と相反する判断を少しもしていないのであるから所論は理由がない。
判例と相反する判断をしたことにならない事例 ―銃砲等所持禁止令違反における同規則一条一号の要否―
銃砲等所持禁止令1条,銃砲等所持禁止令2条,銃砲当所持禁止令施行規則1条1号,刑訴法335条,刑訴法405条2号
判旨
第一審判決が法令の適用に関し、上位法令だけでなくその施行規則等をも照合・適用した趣旨に即して有罪判決を下したと判断される場合には、判決書に施行規則の明文の引用が欠けていたとしても、法令適用の遺脱があるとはいえない。
問題の所在(論点)
判決において罪となるべき事実に対して適用されるべき法令が一部明示されていない場合、それが直ちに法令適用の遺脱(刑訴法上の違法)となるか。
規範
刑罰法規の適用において、処罰の根拠となる実定法のみならず、その内容を具体化する下位法令(施行規則等)の規定についても、裁判所が認定事実に照らし合わせてその趣旨に即した判断を行っている限り、判決書における形式的な引用の有無にかかわらず、実質的な法令適用の遺脱は認められない。
重要事実
被告人が銃砲等所持禁止令に違反したとして起訴された事案。第一審判決は、同令1条および2条を適用して有罪としたが、同令の内容を具体化する「銃砲等所持禁止令施行規則」1条1号の規定についての明示的な適用・引用を欠いていた。これに対し、弁護人は当該施行規則の適用を遺脱したものであるとして、原判決が第一審を是認したのは判例違反であると主張して上告した。
事件番号: 昭和29(あ)548 / 裁判年月日: 昭和30年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】没収の根拠法条の適用に誤りがある場合でも、当該物件が他の法条に基づき適法に没収し得るものであれば、直ちに判決に影響を及ぼすべき著しい法令違反には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲刀剣類等所持取締令違反等の罪に問われ、原審は証拠物件である短刀一振を同令30条に基づき没収した。しかし、当該短…
あてはめ
原判決は、第一審判決が単に上位法令のみを形式的に適用したのではなく、認定された事実を施行規則1条1号の規定にも照合・適用した上で、その趣旨に即して有罪の判断を下したものと認定している。このように、裁判所が下位法令の規定内容を実質的に考慮し、その趣旨を判決に反映させているのであれば、判決書に当該規則の条項が明記されていなくとも、法の適用を誤ったものとは解されない。
結論
本件における法令適用の遺脱はない。第一審判決が施行規則の趣旨に即して判断している以上、原判決がこれを是認したことに判例違反はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
罪となるべき事実に適用される法令が重層的な構造(法、政令、省令等)を持つ場合、その一部の条文引用が欠落していても、判決全体から判断の趣旨が合致していれば直ちに破棄理由とはならないことを示す。ただし、答案作成上は構成要件要素を具体化する下位法令の摘示を怠るべきではなく、本判決はあくまで判決書の不備が直ちに違法とならない限界事例を示すものと理解すべきである。
事件番号: 昭和26(あ)2321 / 裁判年月日: 昭和28年2月24日 / 結論: 棄却
記録を調べると原判決書の記載には所論のような違法があることはこれを認めざるを得ないのであるが、ただ未だ以て刑訴四一一条を適用すべきものとは云い得ないのである。(註)「第一審が無罪とした判示第四事実について破棄自判して有罪と認めるに当り証拠説明を遺脱したもの」
事件番号: 昭和26(れ)1527 / 裁判年月日: 昭和26年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所の管轄が法令に基づき適切に指定されている場合、および起訴された公訴事実の範囲内に特定の所持行為が包含されていることが明白である場合、管轄違いや訴因外の認定といった訴訟法違反の主張は認められない。 第1 事案の概要:被告人が日本刀を所持していた等の事実について、仙台地方裁判所が本件の管轄裁判所…
事件番号: 昭和25(あ)2628 / 裁判年月日: 昭和27年7月15日 / 結論: 棄却
かりに、起訴状謄本の送達が適式でなかつたとしても、本件においては、被告人が異議を述べていないのであつてかかる場合には刑訴四二条の問題とならない。
事件番号: 昭和25(あ)1810 / 裁判年月日: 昭和27年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の自白以外に、関係者の提出した始末書および現物である軍刀の存在が証拠として認められる場合、憲法38条3項の「本人の自白のみ」による有罪判決には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は銃砲等所持禁止令違反の罪で起訴された。第一審判決は、被告人の公判廷における自白のほか、Aが提出した始末書(判示…